測定原理
検体採取用綿棒により咽頭から採取した検体を試薬1、試薬2および試薬3を用いて、溶連菌の特異的抗原を遊離させます。その検体を反応ディスクのサンプルウェル(検体注入口)に滴下し、メンブレン上を移動させます。検体中に特異的抗原が存在する場合、赤紫色コロイド標識抗A群β溶連菌抗体と結合した後、さらに移動して固相化された抗A群β溶連菌抗体に捕捉され、コロイド標識抗A群β溶連菌抗体‐特異的抗原‐抗A群β溶連菌抗体の複合物を形成します。
約5分後、反応終了窓がピンク又は赤色になると、結果を判定することができます。判定ウェルに赤紫色のプラスサイン(+)が現れた場合は、検出感度以上のA群β溶連菌抗原が存在することを示し、抗原が存在しないもしくは検出感度未満の場合は、マイナスサイン(-)が現れます1)2)。
使用上の注意
・検体は、各種ウイルス性あるいは細菌性の感染の恐れのあるものとして取り扱ってください。検査にあたっては、感染の危険性を避けるため、検体を扱う間、使い捨て手袋を使用してください。 ・同一キットの試薬と反応ディスクを組み合わせて使用してください。ロットの異なるキットの構成試薬を組み合わせての使用、また試薬を注ぎ足しての使用は避けてください。 ・試薬ボトルのふたは取り違えずに使用してください。 ・試薬が誤って眼や口に入ったり皮膚に付着した場合には、水で十分に洗い流す等の応急処置を行い、必要があれば医師の手当て等を受けてください。 ・本品の試薬には、防腐剤としてアジ化ナトリウムが含まれています。アジ化ナトリウムは、酸と混合すると有毒ガスを生じるので、廃棄時には酸と混合しないでください。また、排水配管金属中に蓄積した場合、爆発性の化合物を生じる恐れがあるので、廃棄時は大量の水道水で洗い流してください。 ・使用中に検体、試薬等が周囲に飛散した場合は、速やかにふき取るとともに次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素濃1,000ppm)又はグルタールアルデヒド(2%)等により適切な消毒措置を取ってください。 ・抽出操作の終った検体採取用綿棒、反応ディスク、試験管等は、感染の恐れのある廃棄物に関する各施設の規定に従って、次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素濃度1,000ppm、1時間以上浸漬)、グルタールアルデヒド(2%、1時間以上浸漬)又はオートクレーブ(121℃、20分以上)処理等を行った上で、医療廃棄物又は産業廃棄物等に区別して処理してください。 ・濡れていたり、袋が開いている、又は破損している反応ディスクあるいは綿棒は使用しないでください。 ・検査の準備ができるまで反応ディスクのアルミ袋を開封しないでください。 ・使用しない時は試薬ボトルのふたを閉めてください。 ・本品は凍結および直射日光を避け、貯法に従い保存してください。 ・使用期限が過ぎたものは使用しないでください。
品目仕様等
20回用
操作方法
1.準備する器具類 ・時計
2.測定法 (図を参照)
3.注意事項 ・検体抽出に用いる試薬および反応ディスクを2~8℃で保存していた場合、少なくとも使用する30分前には室温(18~30℃)に戻しておいてください。
・反応ディスクは、使用直前に袋から取り出してください。 ・試薬ボトルを斜めにした状態で滴下すると滴下量の不足を招き、液量不足による展開不良が発生することがあります。
・試薬1、2、3を添加する毎に抽出液の色は変化し、試薬1、2、3、が正しい順序で添加されたことを確認することができます。試薬1はピンク色ですが、試薬2を加えると黄色に変わります。さらに試薬3を加えると黄色からピンク色に変わります。いずれかの色の変化、ピンク色から黄色、もしくは黄色からピンク色が起こらない場合、測定に用いることはできません。
・試薬3を加えよくかき混ぜた後、綿棒に含んでいる抽出検体をよくしぼり出してください。しぼり出しが足りないと、液量不足による展開不良が発生することがあります。
・試験管から滴下口がはずれないようにしっかりとセットしてください。 ・抽出後中和処理された検体(操作③まで終了した抽出検体)は、ふたをした試験管等で2~8℃に保存した場合、72時間まで安定です。
・抽出後の検体をサンプルウェルに滴下する際、試験管は垂直に持ち、強く押さずに自然にゆっくり滴下してください。
・抽出後の検体をサンプルウェルに全量滴下し、全ての液を滴下したことを確認してください。
操作上の注意
1.検体の種類
・検体として、咽頭ぬぐい液又は血液寒天培地に咽頭検体を塗布して得たコロニーを用いてください。他の部位から採取した検体、又は唾液、痰、尿などを用いることはできません。
2.検体の採取方法
・検体の採取には、キットに添付されたポリエステル製の検体採取用綿棒(滅菌済み)を用います3)4)。キットに添付された以外の綿棒は用いないでください。
・綿棒を回転させながら、咽頭部(咽頭、扁桃の白くなった部分)の表面を擦過し、検体を採取します。その際、歯、歯肉、舌又は頬の表面に触れないように注意してください。正確な結果を得る為には、適正な検体採取が必要であるため、特に留意願います。
・培養検査を同時に行う場合は、別の綿棒で培養検査用の検体採取を行うか、試薬1と試薬2による抽出操作を行う前に、血液寒天培地に検体を塗布してください。
・本品を、72時間未満の培養を行った血液寒天培地上のA群β溶連菌のコロニーの同定の確認に使用するためには、検体採取用綿棒を用いて、β溶血を示すコロニーに1~3回、軽くふれて菌を採取して検査してください。その際、培地を綿棒でこすらないでください。
3.検体の保存
・検体を採取した綿棒は、検体の採取後できるだけ早く処理してください。処理できない場合は、清潔で乾燥した密閉容器で2~8℃、72時間まで保管できます。
・培養検査用の綿棒は速やかに培地に塗布してください。
・検体は飛散がないように搬送してください。
性能
1.感度試験
1×106CFU/mLのA群β溶連菌を含む管理検体を試験する時、陽性に判定されます。
A群β溶連菌を含まない陰性の管理検体を試験する時、陰性に判定されます。
CFU:Colony Forming Unit
2.正確性試験
管理検体を試験する時、陰性の管理検体は陰性に、1×106CFU/mL以上のA群β溶連菌を含む管理検体は陽性に判定されます。
3.同時再現性試験
管理検体を抽出操作を行って3回同時に試験する時、陰性の管理検体は全て陰性に、陽性の管理検体は全て陽性に判定されます。なおこの時用いた陽性管理検体は5×106CFU/mLのA群β溶連菌を含む検体を使用しました。
4.交差性試験
A群β溶連菌以外の細菌との交差性を、気道から採取した検体において確認された細菌について評価しました。以下に示した細菌は
いずれも本品により陽性の反応を示しませんでした。各細菌は1×108個/mL(Staphylococcus aureusは1×109個/mL)で測定しました。
Streptococcus Groups B, C, D, F, G
Streptococcus oralis
Streptococcus salivarius
Streptococcus pneumoniae
Streptococcus mutans
Streptococcus sanguis
Streptococcus mitis
Staphlyloccus saprophyticus
Staphylococcus aureus
Staphylococcus aureus (Cowan's serotype 1)
Staphylococcus haemolyticus
Neisseria meningitides
Neisseria gonorrhoeae
Neisseria lactamica
Neisseria sicca
Neisseria subflava
Candida albicans
Haemophilus influenzae
Haemophilus parahaemolyticus
Proteus vulgaris
Moraxella catarrhalis
Corynebacterium diphtheriae
Klebsiella pnemoniae
Serratia marcescens
Eschericia coli
Arcanobacterium haemolyticum
Yersinia enterocolitica
Fusobacterium necrophorum
Bordetella pertussis
Pseudomonas aeruginosa
Moraxella lacunata
5.較正用の基準物質に関する情報
自家標準品(A群β溶連菌、ATCC19615株)により検定