監修

裵 英洙(はい えいしゅ)

ハイズ株式会社代表取締役社長
医師、医学博士、経営学修士(M.D.、Ph.D、MBA

 

金沢大学医学部を卒業後、胸部外科を中心に臨床経験を積んだ後、同大大学院にて外科病理学を専攻。病理医として働くかたわら、慶應ビジネススクールにて医療政策・病院経営を学ぶ。在学中に医療機関再生コンサルティング会社を設立し、現在ハイズ株式会社代表取締役として医療機関の経営支援、ヘルスケア企業の医学アドバイザーなどの業務を行っている。著書に、「医療職が部下を持ったら読む本」「なぜ、一流の人は『疲れ』を翌日に持ち越さないのか」「10の仕事を1の力でミスなく回すトリアージ仕事術」などがある。

第5回 再診患者の定着って難しい! ~アドヒアランス向上のために~

高尿酸血症をふくむ生活習慣病では、診療に対する患者さんの満足が得られなければ、治療自体が成り立ちにくくなります。患者さんの不満は、治療の中断やアドヒアランスの低下などにつながり、クリニックの評価や経営にも影響を及ぼします。しかし、患者さんは医師に対して自分の感情を表現しづらく、医療者側が想像力を働かせ、不満の原因を取り除いていくことが必要だと考えられます。

このコンテンツでは、あるクリニックの医師の気持ちをモノローグ(独白)形式で紹介し、患者満足度向上のポイントを裵 英洙先生にご解説いただきます。

モノローグを見る

Case 05

今回の登場人物

八木田俊雄(53歳、男性)やぎた内科クリニック 院長

10年前に開業。近年、周りに競合となる医院が増えてきている中、患者数が減少傾向となっており、何か対策をしないといけないと思っている。高尿酸血症・痛風の診療を得意としている。性格は完璧主義。

高橋恭子(42歳、女性)主婦/パートタイマー

市の健康診断で高血圧と高尿酸血症(8.4mg/dL)を指摘されたため、数ヵ月前からやぎた内科クリニックに通っている。BMIが28で、減量を中心とした生活習慣改善を行ったが、あまり効果が見られなかったため、尿酸降下薬が処方されている。中学生と小学生の2児の母。性格は大ざっぱ。

「八木田先生、荷物が届きましたよ」看護師に渡された段ボールを開けると、大量の布バッグが折り畳まれて入っていた。ひとつを広げてみると、思っていたよりも良い出来栄えだ。『残った薬をお持ちください』という文字とともに、当院のロゴが印刷されている。「これが来週から貸し出す残薬バッグですか」「そうだよ、いい出来だろう?」「小ぶりで使いやすそうですね~」

最近、近所でクリニックの開業が相次ぎ、当院の患者数は減少傾向にある。

再診患者が少ない理由

ライバルは新患集めに躍起だろう。ならば、この地域で10年の実績を持つ当院は、再診患者のドロップアウトをゼロにすることで対抗しよう。

ドロップアウトする理由 不可能な目標を立てない

初診患者が少ない理由

患者が来ない原因を細分化すると・・・

再診患者が
少ない

【原因】

  • 患者サービスに問題がある(受付の対応が悪い、医師のコミュニケーションが不十分、院内が暗い・汚いなど)
  • 再診につなげる取り組みができていない(次回受診の勧奨が不十分・あいまい、受診を中断した患者に連絡をしていないなど)

裵 英洙:医療職が部下を持ったら読む本.p45,日経BP社,2014

ドロップアウトする理由

患者さんのドロップアウトには大きく4つ理由があります。1つ目は患者さんの死亡。2つ目は引っ越し。3つ目は他院に行った。4つ目はどこにも行かずに放置している。基本的にはこの4つのどれかに当てはまります(厳密にいえば「引っ越し=他院に行った」なのですが、ここでは分けて考えます)。身体的な理由で通えなくなるのは仕方のないことですし、引っ越しもコントロールできないことです。ですから、3つ目の「他院に行った」場合と、4つ目の「放置している」に該当しそうな患者さんの対策を検討することが患者満足度向上のカギとなります。

不可能な目標を立てない

この医院では「再診患者のドロップアウトをゼロ」という目標を掲げていますが、死亡や引っ越しはコントロールできませんから、これは無理のある目標です。地域により、たとえば100人いたら毎年2~3人は亡くなっているとか、転勤族が多い地域だから毎年5人は引っ越すというようなことは、大まかに想像がつくはずです。目標を立てるなら、まずそういった地域の背景を検討しないといけません。

そこで、残薬バッグを使ったキャンペーンを行うことにしたのだ。再診時にこのバッグに飲み残した薬を入れて持ってきてもらえれば、患者さんのためにアドヒアランス向上を図り、再診も促すことができる。

ドロップアウトを防ぐ方法

ドロップアウトを防ぐ方法

ドロップアウトを減らす施策を考えるなら、コントロールできる余地のある「他院に行った」と「放置している」に着目しましょう。

他院に取られないためには、まず他院が何をしているかを分析しなければいけません。自分の身内や知り合いから他院にかかっている人の情報を聞くような努力は必要です。そのうえでなぜ他院に自分の患者が取られたか、原因を分析しなければいけません。つまり「敵を知り己を知れば百戦危うからず」です。

また、患者さん自身が放置している場合は、面倒くさいのか、医師のコミュニケーションミスなのか、スタッフが対応を間違ったのかなどを考えて、介入し得る部分を見極めることが大切です。たとえば患者さんは、つれない反応をされたり、目を見て話してくれなかったりすると満足度が下がってしまいます。患者さんは、診察が早い、スタッフが親切、愛想がいいような施設を選ぶ傾向があり、こういう部分を見直すことで患者さんの満足度を高め、ドロップアウトを防ぐことができるかもしれません。そのためには患者さんへの満足度アンケートが効率的です。

キャンペーン初日。診察室に招き入れた女性患者のカルテには、芳しくない検査値が並んでいる。「高橋さん、尿酸値があまり下がっていないのですが、お薬はきちんと飲めていますか?」「えぇ…まぁ…」気まずそうにそらした目が、アドヒアランス不良の証だ。

薬は飲めなくて当たり前

薬は飲めなくて当たり前

医療側はつい、処方薬はきちんと全部飲むのが常識だと思ってしまいがちですが、現実は違います。特に無症候性の高尿酸血症をはじめとした生活習慣病では、服薬アドヒアランスが低いのが実情です。実際に、医師の指示通り服薬している外来患者は50%以下であるという報告(吉川真一ほか:東北薬科大学研究誌,2008;55, 91-97)があります。患者さんが薬を指示した通りに飲まないことに対して感情的になったりしてはいけません。

「尿酸値が高くても体調には現れませんから、薬を飲む必要性を感じにくいかもしれません。しかし、尿酸値が高いと痛風になる可能性はもちろん、腎臓まで悪くなるといわれています。しかも、女性では男性よりもリスクは高いことも報告されているようです。」「このお薬を飲んで、しっかりと尿酸値を下げることが重要ですよ…」案の定、眠たい顔をしているな。よし、秘密兵器を出そうじゃないか!

「高橋さん、これを…」机の下から新品のバッグを取り出して手渡すと、目が覚めたようだ。「これは当院のオリジナルバッグです。次に来院されたとき、ここに残った薬を入れて持って来てください」「はぁ…」「どのくらい飲めたか確認できますし、もし残ってしまったら次の処方量を調整できますので」「…わかりました」「では、1ヵ月後にお越しくださいね」

ありがたみの効用

――その後、高橋さんが来院することはなかった。

予約患者が来なかったとき

数ヵ月後、看護師により近所のスーパーで残薬バッグが買い物袋代わりに使われているのを何度か見かけたという報告がもたらされた……。

ありがたみの効用

再診の予約時に「次は1ヵ月後の●月▲日にお越しください」といっても、世の中はものわかりの良い人ばかりではなく、診察券をどこに置いたかを忘れるような人もいるのです。お勧めの対策は、クリニックのしおりでも何でもいいので、院長が直筆のメモを書いて渡すことです。走り書きでいいのでひと言「お大事に」と書き添えるとより良いでしょう。院長が手書きしたものは簡単には捨てられないものです。要は「ありがたみ」や「特別感」を演出するということですね。「忙しいからできない」と思われるかもしれませんが、実際にやってみると1、2秒で書けます。こういうひと手間を惜しむことで再診率が下がるのは、もったいないですね。また、今回の小説でもやっているように、クリニックのオリジナルグッズを作って貸し出すというのも良い手段です。

予約患者が来なかったとき

もし資源が許せば、予約患者が来なかったときにスタッフから連絡をするといいでしょう。つい寝過ごしてしまったなど、患者側のミスがあると、申し訳ないから行きにくいという感じになってしまいます。来なかったことを責めるのではなく、「今日どうされましたか」「大丈夫ですか」と気遣いの連絡を入れると好印象で、かつそのときに次の予約を取ることもできます。このように単純な点をリカバリーするだけで大きな成果をもたらします。

ウリアデック ワンポイント インフォメーション 他の生活習慣病※を合併する高尿酸血症患者にも優れた尿酸低下作用 ※高血圧、脂質異常症

合併症別 尿酸低下作用(層別解析結果)

目的
承認時までに実施した痛風をふくむ高尿酸血症患者を対象とした5つの国内無作為化二重盲検並行群間比較試験(第Ⅱ相試験3試験および第Ⅲ相試験2試験)の結果より、合併症が血清尿酸値低下作用に与える影響を検討する。
安全性
5つの国内無作為化二重盲検並行群間比較試験において、ウリアデック投与群における副作用は465例中146例(31.4%)に認められた。主な副作用(発現率が5%以上)は痛風関節炎、ALT(GPT)増加、β-NアセチルDグルコサミニダーゼ増加であった。
解析計画
高血圧合併、脂質異常症合併患者における尿酸低下作用について、サブグループ解析を行う。

(株)三和化学研究所
 社内資料:国内臨床試験における層別解析 合併症【承認時評価資料】

ウリアデックは5つの国内臨床試験の結果から、合併率が高いことが報告されている高血圧、脂質異常症合併の高尿酸血症患者さんにおいても、用量に応じた優れた血清尿酸値低下作用を示しました。病態に応じた用量選択により、治療目標値である6.0mg/dL以下の達成が期待できます。

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