監修

裵 英洙(はい えいしゅ)

ハイズ株式会社代表取締役社長
医師、医学博士、経営学修士(M.D.、Ph.D、MBA

 

金沢大学医学部を卒業後、胸部外科を中心に臨床経験を積んだ後、同大大学院にて外科病理学を専攻。病理医として働くかたわら、慶應ビジネススクールにて医療政策・病院経営を学ぶ。在学中に医療機関再生コンサルティング会社を設立し、現在ハイズ株式会社代表取締役として医療機関の経営支援、ヘルスケア企業の医学アドバイザーなどの業務を行っている。著書に、「医療職が部下を持ったら読む本」「なぜ、一流の人は『疲れ』を翌日に持ち越さないのか」「10の仕事を1の力でミスなく回すトリアージ仕事術」などがある。

第4回 ホームページを開設したら患者が増えた~新患を増やすための正しい戦略~

高尿酸血症をふくむ生活習慣病では、診療に対する患者さんの満足が得られなければ、治療自体が成り立ちにくくなります。患者さんの不満は、治療の中断やアドヒアランスの低下などにつながり、クリニックの評価や経営にも影響を及ぼします。しかし、患者さんは医師に対して自分の感情を表現しづらく、医療者側が想像力を働かせ、不満の原因を取り除いていくことが必要だと考えられます。

このコンテンツでは、あるクリニックの医師と受診する患者さんの気持ちをモノローグ(独白)形式で紹介し、患者満足度向上のポイントを裵 英洙先生にご解説いただきます。

モノローグを見る

Case 04

今回の登場人物

一本槍誠治(55歳、男性)いっぽんやり内科クリニック院長

5年前に開業。ベッドタウンにある駅から徒歩3分の好立地にある。患者数が伸び悩んでおり、赤字ではないが儲かっているともいえない。高尿酸血症・痛風の診療を得意としている。

中田拓也(35歳、男性)アパレル商社マーケティング部門主任

健康診断にて数年前から高尿酸血症を指摘されていたが、特に症状がなく放置していた。独身・ひとり暮らしで自炊ができないため、夜はもっぱら近所の居酒屋で晩酌している。顔なじみの客と語らいながらビールを飲むのが生き甲斐。

午後診が終わり、ひと息ついていると電話が鳴った。「一本槍先生、クリニックのホームページは明日から公開できます」サイト制作を依頼していた業者からだ。「ところで、以後の更新やSEO対策ですが…」「しばらくはこのままでいいよ、お世話になりました」今までなかったホームページができただけでも大きな進歩だ。これで新患も増えるに違いない!

集患には2種類ある 初診患者が少ない理由 ホームページへの投資

集患には2種類ある

ひと言で「集患」といっても、新患を集めるのと再診を増やすのは戦略がまったく異なります。我々がクリニックの経営支援を行う際は「新患はどのぐらいおられますか、どれぐらいが理想ですか」と質問します。すると、多くの先生は「多ければ多いほどいい」と答えます。おっしゃる通りではありますが、集患の戦略を考える際には、患者数も重要ですが、新患と再診の適正な比率を考えることも重要です。たとえば、生活習慣病の診療をメインにしているなら、再診患者さんが大きな収入源になります(単価は低いけれど定期的に来てくれます)。仮に1日100人診るとして、何人が再診患者であれば理想かと考え、それに応じて収益計画を立てていく必要があります。また、新患についてはウェブを見た人の割合、チラシを見た人の割合などを細分化して把握しないと、有効な次の手を考えることができません。

初診患者が少ない理由

患者が来ない原因を細分化すると・・・

初診患者が
少ない

【原因】

  • 広告が不十分(患者から認知されていない)
  • ホームページなどで得意分野をPRできていない(患者から選ばれない)
  • 患者のターゲットと運営体制がミスマッチ(ビジネスパーソンの受診を多く見込んでいるのに、午後5時に診療を終えるなど)
  • 診療圏調査・競合分析が誤っている(そもそも地域に患者が少ない、近隣に強力なライバルがいるなど)

裵英洙:医療職が部下を持ったら読む本.p45,日経BP社,2014

ホームページへの投資

今やホームページは新患を増やすための重要な手段です。しかし、ホームページはローンチ(開設)したら終わりではなく、分析や、SEO(検索エンジン最適化 Search Engine Optimization)対策を継続的に行う必要があります。どういう人がホームページを見ているのか、どういうキーワードで検索されて辿り着いたのか、見ているのはスマホかPCか等々を分析し、PDCAサイクル(Plan→Do→Check→Act)を回して、改善を繰り返していくことが成功の鍵です。今回の例のような都市部のクリニックなら、ネット検索からアクセスする患者さんは多いと考えられ、うまく自院のページに誘導しないと、「ホームページを開設したのに患者さんが集まらない」ということになりかねません。ホームページを作っただけで安心してはいけないのです。

居酒屋の暖簾をくぐると、いつもの店員と目が合った。「お、中田ちゃん!カウンター空いてるよ」おしぼりとお通しが置かれた席に腰掛ける。モツ煮込みをツマミにビールを飲んでいると、顔なじみの客が隣に座った。「中田ちゃん、昨日は来てなかったね」「会社の健康診断で絶食だったんですよ」ふと、ぽつんと空いた席が目に留まる。「そういやあの人、最近見ないですね」「先輩は痛風でしばらく来れないよ。かくいう俺も薬で尿酸値を下げてるけどな」――その晩、尿酸値が高いと痛風になること、痛風発作はとても痛いこと、顔なじみが近頃ビールから焼酎に切り替えた理由と、お勧めのクリニックの名前を教えてもらった。

患者のクチコミ

患者のクチコミ

クチコミは患者さんが医療機関を選ぶ際に大きな影響を与えます。医師がもつ知識と患者さんがもつ知識には大きな差があるため、医療は情報の非対称性が大きいサービスといわれています。医療機関を探す患者さんにとって、クチコミはその非対称性を埋めるための手段のひとつです。医療機関を受診した人が良いクチコミをする理由には大きく3つあります。(1) 自分が選んだ医療機関は失敗ではないと、自分で自分を納得させるため、(2) 良い医療機関を選んだ自分は偉いと周囲に知らしめ、自己顕示欲求を満たすため、(3) 他人を喜ばせたい、役に立ちたいという利他意識。逆に、悪いクチコミは、医療機関や医師にいいたいことがある、悔しい気持ちを知ってもらいたい、同じ嫌な思いをほかの人にしてほしくないなど、ネガティブな思いを発散したい欲望から生じることが多いです。なお、悪いクチコミの中には医療機関が気付いていなかった素晴らしい改善のチャンスが眠っていることもあります。

後日、出社すると机の上に健康診断の結果が置いてあった。血清尿酸値は9.3mg/dL。スマホで調べたところ、これはかなり高い値で、痛風発作がいつ起きてもおかしくないらしい。病院に行ったほうがいいよな。

試しに居酒屋で聞いたクリニックを検索してみると、最寄駅から近くて通いやすそうだ。しかし、ホームページの内容はイマイチで、どんな医師が診察してくれるのかよくわからなかった。「まぁ、あの人も行っているし、ここでいいか」

良いホームページとは

良いホームページとは

業者に頼めばある程度の情報が入ったホームページを作ってくれるはずですが、医療機関の特徴に合わせてカスタマイズをしなければいけません。特に自ら開業した場合は、院長の人物像がそのクリニックのイメージを形づくりますので、院長を前面に出さなければいけません。院長の写真や自己紹介はもちろん、専門医資格や所属学会などに加え、患者さんを診るうえで大切にしているモットーなどを記載することが大事です。たとえば「いつも笑顔で接します」「話をよく聞きます」「挨拶をしっかりします」など、自分の人間としての売りを3つぐらい挙げてみてはいかがでしょうか。院長はプレーヤーであり、マネージャーであり、看板です。「客寄せパンダ」になるくらいの気持ちで積極的に前に出ていきましょう。

「こんにちは、院長の一本槍です。本日はどうされましたか?」思っていたより好印象だ。健診結果を渡すと、尿酸値と痛風の関係や、生活習慣の改善について丁寧に説明してくれた。残念ながらビールは減らさないといけない。また、さっそく尿酸値を下げる薬を出すという。「急激に尿酸値を下げてしまうと、その変動が誘因となって痛風発作が起こることがあります。ですから、最初は少ない量から始めて少しずつ増量し、できるだけ変動しないようゆっくり、なめらかに下げていきましょう

診察が終わり、席を立とうとすると院長に尋ねられた。「今日は当院のホームページを見ていらしたのですか?」「あ、はい。見ました」パッと院長の顔が明るくなった。最近作ったばかりだったのだろうか。本当は居酒屋のクチコミを信用しただけで、ホームページのほうはイマイチだった、なんていえないな。今後もお世話になるんだし。「どうぞお大事になさってください」嬉しそうな院長の声が廊下に反響した。

新患を集める方法

新患を集める方法

昔からいわれている「集患の三種の神器」は、看板、内覧会、チラシ(看護師募集&新規オープンの告知)です。これらに加え、今ではホームページも活用されています。ほかにも色々な手段はありますが、大切なことは、いかに地域住民(ターゲット)の目に触れるかです。そのために最適なメディアを選ぶ必要があります。地域の情報誌(タウン誌やフリーペーパーなど)は広告掲載料が安く、コストパフォーマンスに優れる可能性があります。町内会のおじいちゃんが集まる寄合所にポスターを1枚貼るのが最も効果的、ということも十分あり得ます。

今回の事例では新患に対して「何をきっかけに受診したのか」を確認しようとした点は良かったと思います(クローズではなくオープンに聞きとったほうがより良かったですね)。集患の手段を講じたならば、しばらくはその効果を検証しなければいけません。患者さんの生の声を次のプロモーションに生かしましょう。

ウリアデック ワンポイント インフォメーション 1日2回投与で変動を抑えながらなめらかに尿酸値を低下させます

第Ⅰ相試験(反復投与)

対  象
健康成人男子(ウリアデック群1用量あたり6例、プラセボ群8例)
投与方法
ウリアデック80mgを1日1回(朝食後)、40mgを1日2回(朝夕食後)又はプラセボを7日間反復経口投与した。
評価項目
血漿中尿酸濃度など
用法・用量
通常、成人にはトピロキソスタットとして2Omgより開始し、1日2回朝タに経口投与する。その後は血中尿酸値を確認しながら必要に応じて徐々に増量する。維持量は通常1回6Omgを1日2回とし、患者の状態に応じて適宜増減するが、最大投与量は1回80mgを1日2回とする。

(株)三和化学研究所
 社内資料:健康成人における反復投与試験【承認時評価資料】

1日の投与量は同じでも、1日2回投与では1日1回投与に比べてより強く、なめらかに尿酸値を低下させました。

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