監修

裵 英洙(はい えいしゅ)

ハイズ株式会社代表取締役社長
医師、医学博士、経営学修士(M.D.、Ph.D、MBA

 

金沢大学医学部を卒業後、胸部外科を中心に臨床経験を積んだ後、同大大学院にて外科病理学を専攻。病理医として働くかたわら、慶應ビジネススクールにて医療政策・病院経営を学ぶ。在学中に医療機関再生コンサルティング会社を設立し、現在ハイズ株式会社代表取締役として医療機関の経営支援、ヘルスケア企業の医学アドバイザーなどの業務を行っている。著書に、「医療職が部下を持ったら読む本」「なぜ、一流の人は『疲れ』を翌日に持ち越さないのか」「10の仕事を1の力でミスなく回すトリアージ仕事術」などがある。

第3回 ちょっとしたミスがすぐクレームに ~ケアレスミスを減らす報連相~

高尿酸血症をふくむ生活習慣病では、診療に対する患者さんの満足が得られなければ、治療自体が成り立ちにくくなります。患者さんの不満は、治療の中断やアドヒアランスの低下などにつながり、クリニックの評価や経営にも影響を及ぼします。しかし、患者さんは医師に対して自分の感情を表現しづらく、医療者側が想像力を働かせ、不満の原因を取り除いていくことが必要だと考えられます。

このコンテンツでは、あるクリニックを受診する患者さんの気持ちをモノローグ(独白)形式で紹介し、患者満足度向上のポイントを裵 英洙先生にご解説いただきます。

モノローグを見る

Case 03

今回の患者さん

若松健太郎(45歳、男性)中堅ゼネコン会社営業部係長

健康診断にて高尿酸血症(血清尿酸値8.7mg/dL)、I度高血圧(144/95mmHg)、腎機能の中等度低下(eGFR 52mL/min/1.73m²)を指摘され、会社の近くにあるクリニックを受診。高尿酸血症に対して尿酸降下薬が処方されており、今日は3回目の再診。預けていた健診結果の返却を希望している。

トーストにベーコンエッグを乗せて食べるのが、私の朝のルーチンだ。食後に尿酸降下薬を1錠飲み込み、空になったシートを捨てた。今日は出社前にクリニックに寄ることになっている。「あなた、書類忘れないでね」と玄関で妻が念を押す。わかってるよ、と手を振り、ドアを閉めた。

クリニックの受付は相変わらず無愛想だ。生命保険の加入のために、初診時に渡した健診結果の書類が必要なので返してほしいと告げると、面倒くさそうに頷いてメモを取った。まさに塩対応。探せばより良いクリニックはいくらでもあると思うが、なにしろ会社から近いし、院長の不器用な真面目さに何となく好感が持てたので、通院を続けていた。

患者さんとの相性

患者さんとの相性

クリニックの経営支援をする際には、いつも院長に「100点満点を求めてはいけない」といいます。患者さんとは人間対人間なので、「相性」があります。見た瞬間に「俺はこの医師が嫌いだ」と感じる人に対して、時間をかけてリレーションを構築する努力をするよりも、好意を持ってくれる、またはニュートラルな人に対して好意を醸成していくほうが、お互いにとってWin-Winだと思います。もちろん医療の倫理として、「誰に対しても一生懸命に診療する」というのは大前提ですが、しかし現実には、医師の時間や労力、集中力などの資源は有限です。その資源をいかに分配するかがマネジメントです。ある程度のリミッターをかけて「ここまで自分が頑張ったら、これ以上はご縁がなかった」と思ってもいいのではないかと思います。

待たされるのにも慣れっこで、待合室で仕事の資料に目を通していると、診察室に呼ばれた。院長も相変わらず、食い入るように電子カルテを見つめている。「尿酸値を下げるお薬はきちんと飲めましたか」「はい」「前回採血した結果、尿酸値は6.5mg/dLまで下がりました」喜んでいいのかわからない。「前回お話ししたような生活改善はできましたか?」「いえ…あまり変わってないです」「そうですか…では、少し増量して様子を見ましょう」どうも、6.5じゃダメだったようだ。

数字の意味を聞こうと口を開きかけたとき、スタッフが診察室に入ってきた。何か緊急の用事のようだが、院長は「なぜ伝達事項は院内チャットを使わないんだ」と一喝したので、スタッフも私も何もいえなくなった。

報連相されない上司のチェックリスト 情報伝達の勾配

報連相されない上司のチェックリスト

このように一喝されるようなことが2~3回あると、スタッフが情報を伝えにくい環境ができ上がります。どんなに忙しくても、「ありがとう、今、忙しいから○分後にまた来てくれる?」とその場でいえるかどうかが重要です。要は聞く気があるという姿勢をちゃんと見せておくこと。部下はリスクを取って上司に物を申そうとしているので、その勇気にちゃんと報いるということが「上司力」に直結します。これがわかっていない人ほど「部下が全然意見をいってこない」といいます。デキる院長さんは、受付や事務がトコトコと歩いてきて、いつ入るか気配を伺っていることを察知し、こちらから声を掛けることができます。困ってないふりをしているのをいかに見抜くか、それが上司力だと思います。

「報連相されない上司」のチェックリスト
  • 「相談してね」と言いつつ、いざ相談を持ちかけられても投げやりな対応しかできない
  • 「何事も経験だから」と仕事を押しつけるが、あまりフォローしない
  • 自らの仕事のスケジュールに余裕がない
  • 指示する内容がコロコロと変わる
  • 気分にムラがあり、不機嫌な対応を取ることがある
  • 自分とさらに上の役職者との間で、信念や価値観、部下への指示内容が大きく異なっている
  • 部下の努力を自らの手柄として上へ報告する

このうち一つでも該当する場合、
部下から「報告・連絡・相談をしにくい上司だ」と思われている可能性が高い

裵英洙:医療職が部下を持ったら読む本.p36,日経BP社,2014

情報伝達の勾配

私は上司の仕事は環境整備だと割り切っています。部下が働きやすい、部下が情報を出しやすい、部下が患者さんの声を聞きやすい環境をつくってあげることが、上司やリーダーの仕事であり責任です。環境整備に役立つひとつの考え方として、「権威勾配」という言葉があります。「長」が付く役職の人には「権威」がつきます。平のスタッフには権威はありません。この勾配をどういうときに使うかというと、有事のときです。何らかのクレームが生じた、患者さんに重篤な合併症が起こったときは権威勾配を使って、院長の絶対的な指揮権のもとで解決します。一方、平時には権威勾配は使いません。常に権威勾配がなくてなあなあの関係なら、威厳がなくなりますし、意味がないときに偉そうにすることも良くありません。有事は権威、平時は非権威というのがコミュニケーション活性化させるリーダーシップの取り方です。

診察が終わり、鞄を持ったところで大事なことを思い出した。「先生、健診結果を返してください」「え?」やっぱり伝わってない。「受付にはいったのですが、初診のときに渡した健診結果の書類が必要なので返してほしいんです」「そうでしたか…」医師はパソコンを操作し、チャットのログを確認している。「……う~ん、報告が上がってないな。ええと、念のためコピーを取らせていただいて、受付で返却します」「よろしくお願いします」そのとき、机の隅に置いてある紙の切れ端が目についた。受付の人が健診結果の返却について書いていたメモだ!

コミュニケーションインフラ 医師の一人芝居

コミュニケーションインフラ

コミュニケーションコストを下げる方法として、コミュニケーションインフラの構築があります。クリニックによっては、常日頃からコミュニケーションを取れるインフラ(メーリングリスト、チャット、業務日報など)が整備されています。ただし、これは立ち上げよりもメンテナンスが大事です。一度、立ち上げたけれど、誰も使わずに院長だけしか使っていないという状況が容易に起こり得ます。新しいインフラを使うことは心理的抵抗感(面倒くささ)が非常に大きいのです。ポイントは、最初から大々的にやるのではなくて、小さく始めて大きく育てることです。たとえば、「院内旅行に行くための連絡手段として、これを使いましょう」と、喫緊に必要なものから導入して、インフラをアクティブな状態にしてから運用範囲を広げていくほうがうまくいきやすいです。

院長の一人芝居

このクリニックではコミュニケーションインフラとして院内チャットを取り入れたようですが、どうも院長だけ空回りをしているようです。残念ながら、こういうことはよく起こります。マネジメントが下手な医師は、「明日から皆でチャットを使うぞ。オー!」といった具合にいきなり右ストレートを打ってしまいがちです。環境整備というのは基本的にジャブで、小さく始めて、相手の様子を見ながら打つものです。いきなり右ストレートを打って空振りになったら、打ったほうもダメージが大きいですし、周りが見ていても痛いものです。医師はどうしてもロジカルに考えてしまうので、「これを導入すると、こうなって、こういう効果が出る」と自分で満足して「これで完璧だ」と思ってしまいますが、実際にやってみると誰もついてこず、結局、一人芝居になってしまいます。また、経営者は新しいものが好きです。コーチングとか、先ほど紹介した権威勾配とか、新しいフレームワークを知るとすぐ使ってみたくなるものですが、それをしてしまうと職員を振り回すことになりかねません。

釈然としないまま、待合室の椅子に座る。これはどういうことだろう。医療という間違いが許されないはずの現場で、こんな簡単な情報伝達もできないなんて。怒りと諦めの狭間で揺れながら、会計を済ます。「おだいじに~」「…あの、健診結果は?」「えっ、先生から返してもらってないですか?」私の気持ちは一気に怒りのほうへ振り切れた。

「いい加減にしてくれ!院長を呼んで来い!」

ウリアデック ワンポイント インフォメーション 尿酸低下作用は腎機能(中等度低下まで)の影響を受けない

腎機能別の血清尿酸値変化量(サブグループ解析)

目  的
痛風をふくむ高尿酸血症患者を対象に、ウリアデックの用量反応性及び至適用量の検討を探索的に行う。
対  象
痛風をふくむ高尿酸血症患者(血清尿酸値8.0mg/dL以上)74例[80mg/日群24例、120mg/日群25例、160mg/日群25例]
試験方法
多施設共同無作為化二重盲検並行群間比較試験
投与方法
ウリアデックを1日2回(朝夕食後)、12週間経口投与した。ウリアデックは40mg/日から開始し、投与開始2週間後に80mg/日、120mg/日又は160mg/日へ増量した。
評価項目
有効性[主要評価項目として血清尿酸値低下率、副次評価項目として血清尿酸値6.0mg/dL以下の達成率など]、安全性
安 全 性
副作用は、80mg/日群24例中9例(37.5%)、120mg/日群25例中8例(32.0%)、160mg/日群25例中10例(40.0%)に認められた。主な副作用(発現率が5%以上)は、80mg/日群でALT増加、痛風関節炎、γ-GTP増加、AST増加、β-NアセチルDグルコサミニダーゼ増加、120mg/日群で痛風関節炎、四肢不快感、160mg/日群で痛風関節炎、β-NアセチルDグルコサミニダーゼ増加であった。重篤な副作用は認められなかった。副作用により投与中止にいたった症例は3例(口渇、β-NアセチルDグルコサミニダーゼ増加、痛風関節炎、ALT増加、AST増加、LDH増加、γ-GTP増加、ALP値増加)であった。

(株)三和化学研究所 社内資料:第Ⅱ相(Ⅱa)試験(12週間)
【承認時評価資料】

ウリアデックには用量に応じた尿酸低下作用があります。増量いただくことで、病態に応じた尿酸値の低下が期待できます。
投与終了時の血清尿酸値変化量は80mg/日群で-2.9mg/dL、120mg/日群で-3.7mg/dL、160mg/日群で-4.5mg/dLであり、ウリアデックの用量が増加するにつれ、尿酸値がより低下することが認められました。
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