監修

裵 英洙(はい えいしゅ)

ハイズ株式会社代表取締役社長
医師、医学博士、経営学修士(M.D.、Ph.D、MBA

 

金沢大学医学部を卒業後、胸部外科を中心に臨床経験を積んだ後、同大大学院にて外科病理学を専攻。病理医として働くかたわら、慶應ビジネススクールにて医療政策・病院経営を学ぶ。在学中に医療機関再生コンサルティング会社を設立し、現在ハイズ株式会社代表取締役として医療機関の経営支援、ヘルスケア企業の医学アドバイザーなどの業務を行っている。著書に、「医療職が部下を持ったら読む本」「なぜ、一流の人は『疲れ』を翌日に持ち越さないのか」「10の仕事を1の力でミスなく回すトリアージ仕事術」などがある。

第2回 ちゃんと診療しているのに、何が不満なんだ? ~勘違いしやすい患者さんのニーズ~

高尿酸血症をふくむ生活習慣病では、診療に対する患者さんの満足が得られなければ、治療自体が成り立ちにくくなります。患者さんの不満は、治療の中断やアドヒアランスの低下などにつながり、クリニックの評価や経営にも影響を及ぼします。しかし、患者さんは医師に対して自分の感情を表現しづらく、医療者側が想像力を働かせ、不満の原因を取り除いていくことが必要だと考えられます。

このコンテンツでは、あるクリニックを受診する患者さんの気持ちをモノローグ(独白)形式で紹介し、患者満足度向上のポイントを裵 英洙先生にご解説いただきます。

モノローグを見る

Case 01

今回の患者さん

若松健太郎(45歳、男性)中堅ゼネコン会社営業部係長

健康診断にて高尿酸血症(血清尿酸値8.7mg/dL)、I度高血圧(144/95mmHg)、腎機能の中等度低下(eGFR 52mL/min/1.73m²)を指摘されたが、数カ月放置していた。今回、家族に強く勧められ、しぶしぶ受診。課長への昇進を目前にし、なるべくトラブルを起こしたくないと思っている。

若い頃は、「部下を信用しない上司には絶対になるまい」と思っていた。

昔から懇意にしている取引先だから大丈夫だろうと、ゆとり世代の新人と少し頼りない若手に打ち合わせを任せて、私は会社近くのクリニックに向かった。

かかりつけ医を決める理由は利便性

健康診断の結果が妻に見つかり、10歳の娘にまで大げさに心配されては、受診しないわけにはいかない。

かかりつけ医を決める理由は利便性

このような都市部のサラリーマンが医療提供者に求めている「医療の質」は、第一に「利便性」です。医師は「一番大事なのは治療を成功させること」とつい思いがちなのですが、こと高尿酸血症のような生活習慣病では、生活指導と薬物療法をどれだけ続けられるかが要です。患者さんが通いやすい環境や、薬をもらいやすい環境を整えることが、長期的には治療成績に寄与すると考えられます。ですから、忙しい仕事の合間を縫って来ている患者さんに対してどのように利便性を提供するのか、こだわって考えていくべきです。医師はどうしても医学の枠組みで対応してしまいがちですが、会社員は会社員のロジックで動いているので、そこに対しての想像力が必要だと思います。実はそれが「治療の本質」といえるかもしれません。

クリニックの受付に保険証と健診結果を手渡すと、機械のボタンを押すよう促された。出てきた紙には「037」と書かれている。いま診察している人は「030」らしい。そんなに待たされなさそうだ。

スマホでニュースを読んでいると、メールが届いた。「すみません、先方を怒らせてしまったようです」……なんだと!いったんクリニックを出て、電話で状況を確認する。

順番は「034」まで来たが、思っていたより遅い。「あと2人なのでお待ちください」と答える受付に何かを期待するのはやめた。

受付からシグナルを

待合室の椅子に座り、脳内シミュレーションを繰り返す。どう対処するか。部下の認識に齟齬はないか。どのレベルで収拾可能か。ううむ、情報が足りない。一刻も早く会社に戻りたい。もう、診察はキャンセルしようか。腰を上げかけたタイミングで、「036」が「037」になった。仕方ない。診てもらってから急いで帰ろう。

システムは本当に機能しているか

受付からシグナルを

スマホを持って待合室から出ていったり、そわそわした感じなどから、この患者さんは何か急ぎの用事があることを察知できたはずです。「あと2人」などというわかりきったことをいうのではなく、まず「お待たせしてすみません」と謝り、もし重症患者などでかなり時間が取られているなどの理由があるならそれを説明し、このまま待たれるかを聞いても良かったかもしれません。また、院長はこの患者さんが急いでいることを知り得ないため、スタッフがメモなどで「お急ぎの患者さんがいます」などと伝えるとより良い対応だと思います。

システムは本当に機能しているか

このクリニックでは、待っている順番がわかる受付システムを導入しています。このシステムをうまく使えば、患者さんの利便性に寄与できると思います。しかし、導入しただけで安心してはいけません。今回の場合は、「呼ばれる順番がわかっているのだから待てばいい」というような画一的な受付対応につながってしまっています。このようなシステムは、つい「周りのクリニックが導入しているから、うちも入れよう」となってしまいがちですが、そうではなく、「このシステムを入れたら、本当に患者さんのためになり、職員も楽になるか」検討してから導入しましょう。また、導入後は運用面もきちんと考えていかないと、無用の長物になってしまう可能性があります。

いかにも真面目そうな医師は、食い入るように健診結果を見つめている。「尿酸値が8.7と高めで、血圧も144/95と高めですね。今までに痛風発作を起こしたことはありますか?」「いえ、ないです」医師はその後、いままでにかかった病気や家族の病気、食事、飲酒、運動、仕事など、かなり細かく聞いてくる。

エモーショナルにドアをノックして、ロジカルにドアを閉めなさい

ポケットの中のスマホがブルっと震える。メールだ。また何か厄介事が起こったのか?

エモーショナルにドアをノックして、ロジカルにドアを閉めなさい

相手の心に入るには、まずエモーショナルにドアをノックすることが大事です。たとえば、「今日はどうされましたか。大丈夫ですか。今日お急ぎですよね」とエモーショナルに入っていって、「お急ぎだと思いますが、実は高尿酸血症を放置していると痛風発作が起こりやすくなりますよ」という話をし、「じゃあ、次回まで生活習慣を見直していただいて、難しいようなら薬物治療を検討しましょう」という風にロジカルに扉を閉めるのです。つい医師は、エモーショナルな対応はゼロで、ロジカルでドアをノックし、そのままロジカル一辺倒で、ドアをバタンと閉めてしまいます。病気になって「どうしよう」と思っている患者さんは、ロジカルで攻められるよりも、エモーショナルにすっと入ってもらうほうが、ほんわかと「この先生、いいな」と思ってくれますよ。

生真面目な医師はマイペースで診察を続ける。「付き合いでお酒を控えるのは難しいですか…」「ちょっと肥満気味ですね」「腎機能も少し低下しているようです」ブルブルっ。スマホが呼んでいる。「生活習慣の改善とともに、早めにお薬を飲まれたほうがいいかもしれません」スマホが気になって、私はただ首を縦に振るだけの水飲み鳥となった。「いつ痛風発作が起きるかわからない数値です」はい。「尿酸値をゆるやかに低下させる尿酸降下薬を出しますね」はい。「この薬は、少し腎機能が悪い人でも使えます」はい。「飲んでみて何か気になる点があったらすぐに連絡してください」はい。「ではこの後、採血と栄養指導もやりましょう」
はい……じゃなくて、「時間がないんで、結構です!」

最初から100点満点を目指さない

次回はこの患者さんが検診結果を取りに再び来院します。
次こそは患者さんの満足度は満たされるのでしょうか?

最初から100点満点を目指さない

医師には「単回で勝負をつけよう」とする人が多いと思います。しかし、初診で100点満点を目指すべきではありません。今回のケースでいうと、100点満点は「医師が提案した治療方針で患者さんが納得し、それを実践してもらって、そして奥さんと娘さんを安心させる」ことになるかと思いますが、初診だけでこれを達成するのは無理です。まずは60点を目指しましょう。そして再診で70点、その次は85点というような感じで、目標達成までの時間軸を延ばして考えることがポイントです。ただ、われわれ医師は医学教育の中で「目の前の患者さんを助けなさい」と教えられていますので、高い尿酸値を下げるのが腕の見せ所だ、という感覚になってしまいます。逆説的ですが、そこをぐっと我慢できるかどうかが大事です。まず、患者さんが求めていることを満足させてあげて、次の2回目、3回目につながる架け橋をつくることが重要です。今回のケースでは、急いでいることに対して配慮し、次回また時間を作って来ていただけるように、少しでも治療へのモチベーションを上げることに注力すれば、60点が取れたのではないでしょうか。

ウリアデック ワンポイント インフォメーション 有効性・安全性は腎機能(中等度低下まで)の影響を受けない

腎機能別の血清尿酸値変化量(サブグループ解析)

目  的
中等度腎機能障害を合併した痛風をふくむ高尿酸血症患者を対象に、ウリアデックの有効性及び安全性をプラセボを対照として検討する。
対  象
中等度腎機能障害に(CKDステージ3)を合併した痛風をふくむ高尿酸血症患者(血清尿酸値:痛風関節炎の既往又は痛風結節のある患者7.Omg/dL以上、上記以外の患者8.0mg/dL以上)(腎機能:30≦推算糸球体濾過量(eGFR)く60mL/min/1.73㎡) 123例[プラセボ群61例、ウリアデック群62例]
試験方法
多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験
投与方法
ウリアデック群及びプラセボ群に無作為化し、ウリアデック又はプラセボを1日2回(朝タ食後)、22週間経口投与した。ウリアデックは40mg/日から開始し、投与開始2週後に80mg/日、6週後に120mg/日、14週後に160mg/日へ段階的に増量した。
注)投与2週後、6週後、14週後、22週後に痛風関節炎が発現していた場合、最大1週間までそれぞれの用量で投与を継続した。
評価項目
有効性[主要評価項目として血清尿酸値低下率及びeGFR変化量、副次評価項目として血清尿酸値6.Omg/dL以下の達成率、尿アルブミン/クレアチニン比、家庭血圧など]、安全性
安 全 性
副作用は、ウリアデック群62例中25例(40.3%)、プラセボ群60例中14例(23.3%)に認められた。主な副作用(発現率が5%以上)は、ウリアデック群で痛風関節炎、ALT増加、AST増加、プラセボ群は痛風関節炎、尿中アルブミン陽性であった。 本試験において重篤な副作用は、1例(多発性関節炎)に認められた。副作用により投与中止にいたった症例は、3例(AST増加、ALT増加、湿疹、多発性関節炎)であった。
使用上の注意
(一部抜粋)
1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
(1)重度の腎機能障害のある患者[使用経験がなく安全性が確立していない。]

(株)三和化学研究所 社内資料:第Ⅲ相CKD試験【承認時評価資料】
Hosoya T, et al. : Clin Exp Nephrol 18 (6) : 876, 2014

中等度腎機能障害(CKDステージ3)を合併した痛風をふくむ高尿酸血症患者123例を対象に、ウリアデックまたはプラセボを22週間経口投与した第Ⅲ相無作為化二重盲検試験において、投与終了時の血清尿酸値6.0mg/dL以下の達成率は、プラセボ群が0.0%であったのに対し、ウリアデック群では90.0%であり、ウリアデックには優れた尿酸低下作用があることが示されました。

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