第8回 高尿酸血症治療のめざすことを住友病院 松澤先生に伺いました。(前編)
住友病院 院長 松澤佑次先生


平素よりお世話になっております。
先生は高尿酸血症治療をどのように考えていらっしゃいますでしょうか。住友病院院長の松澤佑次先生によりますと、高尿酸血症は、近年新たな薬が登場したこともあり、捉え方が変わってきているようです。これまでの痛風・高尿酸血症の変遷とこれからの治療などについてお話を伺いました。2回に分けてご紹介させて頂きます。
第1回 高尿酸血症治療の変遷 「6・7・8のルール」はこう決まった

メタボリックシンドロームと高尿酸血症

――高尿酸血症は痛風発作を引き起こすだけでなく、腎障害やメタボリックシンドロームと合併しやすいこともわかってきています。メタボリックシンドロームと高尿酸血症の関係について教えてください。

[松澤先生] メタボリックシンドローム(以下、メタボ)は、動脈硬化性疾患の予防に対してできた概念です。動脈硬化性疾患の一番大きなリスクファクターであるLDL-Cはスタチンなどの登場により管理できるようになりましたが、動脈硬化性疾患が完全になくなることはありませんでした。やがて、それまで大きなリスクとは捉えられていなかった高血糖、高血圧、中性脂肪、HDL-Cの異常が重なっている(マルチプルリスクファクター)人はリスクが高く、これらの上流に内臓脂肪の蓄積があることが理解されるようになりました。そこで2005年に内臓脂肪の蓄積をベースとした、マルチプルリスクファクター症候群を内包するメタボという概念が発表され、現在の特定検診・特定保健指導につながっているわけです。
メタボは高尿酸血症を合併することが多く、論議がありましたが、現状では高尿酸血症はメタボの構成因子には入っていません。一方で高尿酸血症から見ると、内臓脂肪の蓄積をベースとしている人が非常に多いので、メタボと密接に関係すると思います。

――メタボと高尿酸血症を合併した場合、治療はどうすればいいでしょうか。

[松澤先生] メタボ対策の基本コンセプトは、生活習慣を正して内臓脂肪を減らすことによって、下流にある症候を改善し、動脈硬化のリスクを下げることです。メタボのひとつの症候として高尿酸血症がある場合は、まずは内臓脂肪を減らす生活習慣改善を指導すべきです。ただ、体質などの問題があり、内臓脂肪を減らしても尿酸値が正常範囲にならない場合は、薬物療法を検討することになります。

高尿酸血症の治療方針の変遷 ―6・7・8のルール―

――メタボと高尿酸血症を合併した場合の治療方針を教えていただきましたが、これまで高尿酸血症の治療方針はどのように考えられてきたのか、その変遷を教えていただけますか。

[松澤先生] 紀元前から痛風という概念は認知されていたのですが、高尿酸血症は長いことオーソライズされていませんでした。痛風が症状として非常に目立つため、痛みをどう取り去るかが課題であり、その背景にある高尿酸血症は付随的な扱いだったのです。
しかし、御巫清允先生は、数十年前から「痛風の原因は高尿酸血症である」と指摘しておられました。高尿酸血症の病型を判定してから、尿酸の合成を阻害するアロプリノールもしくは排泄を促進するベンズブロマロンで治療することを早くから啓発されました。ただ問題は、それらの薬剤の適応症が長い間、痛風と、高尿酸血症を伴う高血圧症の2つだったのです。

――痛風があって初めて治療するという位置付けだったのですね。

[松澤先生] そうです。痛風発作がないと、治療対象になっていないという、驚くべきことがずっと続いてきたわけです。ですから、私が会長を務めた日本プリン・ピリミジン代謝学会(現・日本痛風・核酸代謝学会)の第29回総会(1996年 )では、「痛風発作を伴わない高尿酸血症の治療指針」を検討しました。当時は高尿酸血症の定義が確立しておらず、各施設でばらばらでしたので、その総会に先駆けて、どこから高尿酸血症とし、どこから治療をするか、そして薬物治療の目標はどこか、という3点について全国調査を行いました。その結果、7mg/dLを正常の上限値として、8 mg/dLでは薬物治療を開始し、6 mg/dL以下を治療目標にするという「6・7・8のルール」をまとめ、後で十分また検討して変えてください、ということで発表したのです。これが今の基準の原型になり、大きな齟齬はないということで、現在でも使われています。
三和化学研究所では、松澤佑次先生にご監修いただきました患者指導箋を準備しております。本指導箋は、表面は高尿酸血症の治療意義のご説明、裏面は服薬指導にご活用いただけるものです。
表面では尿酸の結晶を雪に例えて、高尿酸血症では尿酸が徐々に蓄積していくことと、一時的に尿酸値を下げても体内にたまった尿酸塩結晶はすぐにはなくならないため、尿酸の結晶を溶かすためには溶解限界の6mg/dL以下を長期に維持する必要があることを、「6・7・8のルール」とともにお示ししております。

ご連絡いただければ、10枚綴りの冊子をお持ちいたします。

ウリアデック添付文書
松澤先生ご監修の患者指導箋(表面)
松澤先生ご監修の患者指導箋(裏面)

三和化学研究所