第5回 河盛先生・秦社長対談 理想の糖尿病治療をめざして(後編)
糖尿病治療のめざすことは
弊社は、糖尿病領域における製品開発のみならず、併せて活性型GLP-1、GIPの定量法の開発などにも取り組んできました。今回、弊社社長が順天堂大学河盛先生に「糖尿病治療のめざすこと」についてお話を伺いました。河盛先生の糖尿病治療の考え方とともに糖尿病領域における弊社の企業姿勢について、2回に分けてご紹介させて頂きます。
後編 糖尿病の早期治療と良質な血糖管理

早期治療における患者指導

[秦社長] 前回、河盛先生から2型糖尿病の始まりは食後過血糖であり、早期介入が重要だというお話を伺いました。早期に治療を開始する際には患者さんにどのような指導をされるのでしょうか。

[河盛先生] 今まで正常だったのに、何故食後過血糖になったのか、さらに糖尿病を発症したのか、を詳しく説明することが大切です。そして発症前に戻すことを目指して、まず現状の食事内容、頻度、間食の有無、身体活動の程度などを詳しく聞き取り、問題のあるライフスタイルを徐々に是正すべく指導していきますが、指導するばかりではなく、「糖尿病になる前に戻りましょうね、今頑張りましょう」と伝えることが重要です。患者さんのモチベーションが高まり、治療への取り組みに励んでくださいます。

[秦社長] 患者さんを動機づける心理的なサポートも重要だということですね。

[河盛先生] その通りです。一方、食事・運動療法を3ヵ月間続けてもHbA1c 6.2%未満を達成できず、例えば食後血糖値が180mg/dlを超える、などといった場合には、食事・運動療法の効果を高めるような薬剤を選び、積極的に介入を行います。

薬物選択の考え方

[秦社長] 早期の2型糖尿病の薬剤選択で重要なことは何でしょうか。

[河盛先生] なぜ、食後過血糖が生じたのか、2型糖尿病に進展したのか、病態を考えてみましょう。食後に流入したブドウ糖の肝臓での取り込み率が低下したことが食後高血糖の理由です。それを解消するには、図の1から5のような手法が必要になる、と思います。
[秦社長] 治療開始時に選択されることの多い薬剤の特徴について、そして治療薬について説明するときに工夫されていることはありますか。

[河盛先生] 治療薬がどのような“からくり”で2型糖尿病の病態を改善するのかを説明することが大切です。例えば、α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)は、食事療法の効果を高めることが実証されています。これは、炭水化物の腸での分解を緩やかにして、肝へのブドウ糖流入パターンを、遅延しているインスリン分泌パターンに一致させ、肝でのブドウ糖取り込みを高めるからです。メトホルミンは、近年その多彩な作用機序が次々と解明され、肥満の有無にかかわらず有効です。食前に服用すると、腸から脳、肝へのシグナルを活性化させ、肝でのブドウ糖処理を高めます。
DPP-4阻害薬は当初考えられていたインスリン分泌促進作用よりも、むしろグルカゴン分泌抑制作用が強いことが判明してきました。食後に肝に流入するインスリン・グルカゴン・ブドウ糖のカクテルの比率が、肝臓でのブドウ糖取り込み率を高め、食後の血糖応答を良くすることを証明してきました。この薬剤はたとえ、グリニドやSU,さらにインスリンと併用しても、良好な血糖コントロールを維持し、かつ低血糖を来しにくいことが経験的に知られていましたが、その機序がDPP-4阻害により増加したGIPを中心に解明されてきました。
大切なことは、1剤で血糖管理目標値に到達しない場合は、作用の異なる薬剤を選択し併用し、1+1の効果が3、1+1+1の効果が6となるようにして、正常血糖応答を維持することをめざすべきなのです。

三和化学研究所の企業姿勢

[秦社長] ありがとうございます。ところで河盛先生は弊社にどのようなことを期待していただけますか。

[河盛先生] 日本の糖尿病に関わる環境は、検査・診断・治療のあらゆる面において世界的にも優れています。治療薬だけでなく、検査機器も扱っている三和化学研究所には、そうした環境を最大限活用するための支援をお願いしたいですね。

[秦社長] 糖尿病領域では、セイブル、スイニー、グルテスト、HbA1cの迅速測定器など弊社の製品が充実してまいりました。しかし、企業として製品ありきではなく、疾患を軸とする高い知識をもつMRを育成し、先生方のお役に立ちたいと思っています。また、現在はグルカゴンの測定法の確立に取り組んでおり、サイエンスとしても貢献していきたいと考えています。最後にプライマリケアの先生方に一言コメントを頂けますか。

[河盛先生] 糖尿病は最もありふれた疾病の一つになってきました。さらに進歩した糖尿病の病態生理の理解、その治療への展開、などの知識を駆使していただいて、全ての医療者が患者さんの将来を見据えて、診断早期から、より積極的に対処していただきたい、と思います。優れた薬剤などの切り札は使ってこそ切り札です。切り札を温存している間に、ゲームオーバーになった、では残念ですね。ぜひ一緒に糖尿病の治療に取り組んでいきましょう。