第3回 河盛先生・秦社長対談 理想の糖尿病治療をめざして(前編)
糖尿病治療のめざすことは
弊社は、糖尿病領域における製品開発のみならず、併せて活性型GLP-1、GIPの定量法の開発などにも取り組んできました。今回、弊社社長が順天堂大学河盛先生に「糖尿病治療のめざすこと」についてお話を伺いました。河盛先生の糖尿病治療の考え方とともに糖尿病領域における弊社の企業姿勢について、2回に分けてご紹介させて頂きます。
前編 糖尿病の早期発見と治療

早期に発見できた糖尿病を放置しないで

[秦社長] 河盛先生はかねがね“糖尿病放置病が蔓延してはいないか”と警鐘を鳴らされていますが、その意味するところを教えていただけますか。

[河盛先生] 日本ほど健診がいきわたっていて、糖尿病が早期発見されている国は他にありません。しかし診断された方々が、症状がないからと無視してしまいがちです。一方、他の疾病で医院を訪れた際、食後の採血結果で高血糖が見つかるケースが多いものです。耐糖能が正常であれば、暴飲暴食しても食後の血糖値が140mg/dl以上になることはありません。しかし、「食後のみの一過性の過剰な血糖値の上昇」、すなわち食後過血糖が認められた、ということは、肝に流入したブドウ糖が肝に十分量取り込まれず、全身に流れでていること、を示しています。その主な原因としては、肝でのインスリンの働きの低下が挙げられます。この状況を放置してしまうと、食後高血糖がインスリン分泌の低下などをも引き起こし、糖尿病の発症につながります。

[秦社長] 食後過血糖を通常の診療下で見つけ出すポイントをお教えください。

[河盛先生] 例えば、健康診断などで空腹時血糖値が正常なのにHbA1cが6.3%以上であれば食後過血糖を繰り返している可能性が高いと思われます。食後過血糖が疑われる患者さんには、空腹時ではなく、食事をとってから1〜2時間を目安に来院してもらい、HbA1cとともに食後の血糖値と尿糖を測定することをお勧めします。その結果、食後血糖値が例え150mg/dl程度だとしても、尿糖が陽性であれば、血糖値が180mg/dl以上になった時間帯があることを示しています。

糖尿病の早期治療

[秦社長] ごく早期の2型糖尿病と診断したときに、どのタイミングで治療を開始したらよいのか判断に迷われる先生方もいらっしゃると聞いています。早期治療の重要性についてお考えをお聞かせください。

[河盛先生] 健常人にみる血糖コントロールを再現するには、内因性インスリンを保持し、有効活用することが必要です。そのためには、今まで考えられていたタイミングよりもより早期から、積極的な治療介入して内因性インスリン分泌を保持することが必須です。軽度であれ食後過血糖が続くと、インスリン分泌が低下するからです。一例一例で病態が異なりますので、それを是正する食事・運動療法を指導し、月に1回は食後に採血して治療効果を評価し、必要ならば、どのようなからくりでこの薬が働くのか十分説明した上で薬物療法を開始することも求められます。こうした早期介入を行い、“糖尿病でなかった状況に速やかに戻し、維持する”ことを目指すべきであり、今や多彩な薬を用いることにより、それが実現可能になってきているのです。

[秦社長] ごく早期の2型糖尿病であっても経過を観察するのではなく、そのときが“糖尿病でなかった状況に戻す”ことができる機会だと考えて、積極的に治療介入すべきと言う事ですね。弊社でも、そうした診療の考え方の普及に少しでも貢献できればと考え、河盛先生のご監修の下、生活習慣の聞き取りや食後過血糖の危険性を説明する資材(右図)を作成しております。2型糖尿病の診療に携わっておられる先生方に、ぜひご活用頂ければと思います。また、プライマリケアの先生方に食後過血糖を見逃さないことの重要性を再認識していただくための講演会を全国各地で開催するとともに、食後血糖値測定の普及活動にも力を入れております。こうした活動を通じて、各エリアにおける実地医家の先生方の糖尿病治療に貢献できればと考えております。

[河盛先生] 糖尿病を専門にしている医師は、種々の合併症の発症・進展阻止を目指して治療していますが、ご紹介いただいた時に既に内因性インスリン分泌が枯渇した例が多く、良好な血糖応答を維持するのに難渋しています。プライマリケアの先生方は、実臨床の最前線で、ごく早期の2型糖尿病患者さんを診られる機会も多いと思います。その段階から、今まで以上に積極的に介入し、糖尿病発症前の状況に戻していただければ、2型糖尿病患者さんの増加を効率的に防ぐことができると思います。多くの先生方と交流する機会の多い企業として、糖尿病放置病を減少させる活動を支援していただければと思います。

[秦社長] 本日は、貴重なお話を頂戴しましてありがとうございました。