ダイアベティスチームの秘密、じっくり聞いてきました

ダイアベティスチームの秘密、じっくり聞いてきました

この企画について

糖尿病治療の要となる「多職種連携」に焦点を当て、全国の医療機関のダイアベティスチームを訪ねるインタビューシリーズです。
各専門職がどのように連携し、施設の強みを活かした独自の取り組みを展開しているのかを深掘りします。
患者さんのQOL向上と前向きな治療支援を目指し、試行錯誤を重ねる現場の声を通じて、理想的なダイアベティスチーム医療のあり方を探求していきます。

Vol.1前編

患者さんが前向きに治療に取り組むために:「伴走型」の透析予防外来

投稿日:2026.6.25

糖尿病患者さんの健康とQOLを守るためには...専門職が職種の垣根を超えてフラットに意見を交わし、患者さんと前向きな目標を共有することが大切です。今回は、東京ベイ・浦安市川医療センターの糖尿病サポートチームが立ち上げた「透析予防外来」における腎症早期からの徹底した食事・生活習慣の改善支援など、将来的な透析導入の予防への取り組みをご紹介します。

インタビューにご協力いただいたのは…

東京ベイ・浦安市川医療センター(千葉県浦安市)

天達 佳代子先生

看護部

日本糖尿病療養指導士・フットケア指導士・腎臓病療養指導士

大矢 真理子先生

医療技術部 栄養室

日本糖尿病療養指導士

髙橋 さおり先生

看護部

千葉県糖尿病療養指導士・日本糖尿病療養指導士・抗酸菌症エキスパート

森 裕也先生

医療技術部 薬剤室

腎臓病薬物療法認定薬剤師・腎臓病療養指導士

管理栄養士と看護師が連携する、患者さん中心の「透析予防外来」

東京ベイ・浦安市川医療センター 腎臓・内分泌・糖尿病内科では、患者さんの多様な病態に合わせた専門外来を広く設けています。糖尿病に関連しては「DM指導外来」「インスリンポンプ外来」、また腎臓病関連では「CKD外来」「腹膜透析外来」を開設しています。

ここに新たに「透析予防外来」が加わったのは2018年。腎機能低下が進行し、将来的に人工透析が必要になるリスクのある患者さんに対し、他職種で連携して食事・生活習慣の改善を行い、透析導入の予防を図るための専門外来です。
「当科には総合内科から糖尿病の患者さんが転科されることも多いのですが、透析予防外来が加わる以前は、eGFRがかなり低下してから初めて栄養指導を受けるようなケースもあり、もっと先回りした予防支援が必要だと感じていました。」(大矢管理栄養士)

様々な医療関係者がカンファレンスしている様子

糖尿病サポートチームが集う「月1会議」では、糖尿病治療の問題点や新規デバイスの情報共有、糖尿病教育入院のクリニカルパスの見直しなど、治療の質向上に向けて幅広く議論しています。その会議で「透析予防外来」が議題に上がり、「もっと早く支援できていたら...」という患者さんを一人でも減らしていこうと意見が一致しました。
「透析予防外来をつくることで、多職種連携の包括的なケアがしやすくなりますし、診療報酬も算定できます。これはすぐに取り組もうと立ち上げに奔走しました。」(天達看護師)

患者さんと前向きな目標を共有できるメリット

透析予防外来では、まず管理栄養士が患者さんの食生活をヒアリングします。その後の食事状況については、年齢や生活背景に応じて、アプリによる食事記録や手書きの食事記録など、患者さんに合った記録方法を選択しています。これらの患者さんに関する情報は指導記録を通じて、看護師にも共有され、患者さんに向けて継続的にフォローアップする流れをつくっています。
「患者さんの理解度やモチベーションを確かめて、不安や疑問がある場合、再度お伝えしたり、励ましたりして、看護師は実行に向けた伴走役を担います。」(天達看護師)
「私たち栄養士も、患者さんの反応を看護師から教えてもらい、次回の栄養指導に活かしていきます。」(大矢管理栄養士)

透析予防外来が始まり、メンバーが手応えを感じたのは、患者さんの意識面の変化です。
「普段の治療支援と異なる場を設けることで、患者さんの意識も改まり、治療へのモチベーションも高まっていると感じます。」(髙橋看護師)
「栄養指導は食事の制限を伝えなければならないので、受け身になりがちな患者さんも少なくありません。でも、透析予防外来は、『透析を予防していきましょう』と患者さんの将来のQOL維持につながる前向きな目標を共有できます。患者さんを中心に明確な目標に向かって一つになる雰囲気がつくりやすくなったと感じます。」(大矢管理栄養士)

透析予防外来にて管理栄養士が説明している様子

対象となる患者さんの抽出は、医師が中心となりますが、チームのメンバーも対象となりそうな患者さんがいた際には医師に声をかけています。
「eGFRの変化など、患者さんの状態変化を把握し、透析予防外来が必要な患者さんがいた際には先生に相談します。チームで連携して、適切なタイミングで患者さんにアプローチし継続看護につなげることを心がけています。」(天達看護師)

相談用PHSの運用で"即時即応"のきめ細やかな診療の実現

東京ベイ・浦安市川医療センターの糖尿病サポートチームが際立っているのは"即時即応"で展開される見事なチームプレーです。チームといっても持ち場はそれぞれ異なり、月1会議やカンファレンス以外は、肩を並べて働く場面はそう多くありません。そこで始まったのが「相談用PHSの運用」です。基本的に相談用PHSは医師が持っていますが、内容に応じてチームにも連絡が入り、確認したいこと・相談したいことがあれば、電話ですぐ連絡できるような体制を整えています。

「GLP-1受容体作動薬を服用した患者さんに消化器症状が出た際の対処法など、薬の飲み合わせや副作用などについては疑問が生じたタイミングで電話がかかってきますね。糖尿病治療において薬物療法は非常に重要で、他の疾患を併発している患者さんも多いので、その場ですぐに適切な情報を提供するようにしています。」(森薬剤師)
「薬剤師には通常業務がある中で、きめ細やかに対応していただいています。専門職に問い合わせることで、俯瞰的かつ長期的な視点に立った情報を得ることができ、患者さんに正確に伝えられます。質の高い医療を提供するには、専門職につなぐことがとても大切だと考えています。」(髙橋看護師)

PHSで相談している糖尿病サポートチームの看護師の様子

栄養指導が必要な患者さんには当日に急遽、医師や看護師から、管理栄養士に依頼が舞い込むこともあるといいます。
「患者さんによっては、栄養指導が後日(次回)になってしまうと、モチベーションや関心がぐっと下がってしまう方もいます。患者さんの病状や性格によっては、医師の診察を受けた後に、栄養指導を受けるのはすごく効果的だったりするので、その場合は栄養士にすぐ電話して、患者さんの対応をお願いするようにしています。」(天達看護師)
「もともと当院は栄養指導に力を入れていますが、糖尿病はとくに栄養指導が大切な疾患ですから、私たち栄養士も患者さんをオープンに受け入れていきたいと考えています。」(大矢管理栄養士)
相談用PHSの運用は、病棟看護師との連携にも役立っており、退院後に向けた持続血糖測定器やインスリンポンプの装着教育の際に電話が入り、チームの看護師が応援に駆けつけることもあるといいます。
医療現場では、それぞれの専門職の立場から、より良い治療や支援、スタッフの働きやすさについて意見や気づきがあるはずです。東京ベイ・浦安市川医療センターの糖尿病サポートチームは、それぞれの専門職が自由に意見を表明し、フラットに語り合える場があり、力を合わせて実現していく実行力が備わっています。こうしたチームの活力が、診療の場にも活気を生み、患者さんが前向きに治療に取り組める環境づくりにつながっているようです。

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