監修

裵 英洙(はい えいしゅ)

ハイズ株式会社代表取締役社長
医師、医学博士、経営学修士(M.D.、Ph.D、MBA

 

金沢大学医学部を卒業後、胸部外科を中心に臨床経験を積んだ後、同大大学院にて外科病理学を専攻。病理医として働くかたわら、慶應ビジネススクールにて医療政策・病院経営を学ぶ。在学中に医療機関再生コンサルティング会社を設立。現在、ハイズ株式会社代表取締役として医療機関の経営支援、ヘルスケア企業の医学アドバイザーなどの業務を行っている。著書に、「医療職が部下を持ったら読む本」「なぜ、一流の人は『疲れ』を翌日に持ち越さないのか」「10の仕事を1の力でミスなく回す トリアージ仕事術」などがある。

第8回 慕われる医師になりたい!―信頼関係を保つ叱り方―

高尿酸血症をふくむ生活習慣病では、診療に対する患者さんの満足が得られなければ、治療自体が成り立ちにくくなります。患者さんの不満は、治療の中断やアドヒアランスの低下などにつながり、クリニックの評価や経営にも影響を及ぼします。しかし、患者さんは医師に対して自分の感情を表現しづらく、医療者側が想像力を働かせ、不満の原因を取り除いていくことが必要だと考えられます。

このコンテンツでは、3人のクリニック院長の会話を通じて、患者満足度向上のポイントを裵 英洙先生にご解説いただきます。

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Case 08

今回の登場人物

一本槍誠治(55歳、男性)いっぽんやり内科クリニック 院長

5年前に開業。ベッドタウンにある駅から徒歩3分の好立地にある。患者数が伸び悩んでいるため、最近ホームページを開設した。性格は楽観的。

八木田俊雄(53歳、男性)やぎた内科クリニック 院長

10年前に開業。周囲に競合の医院が増え、患者数が減少傾向となってきた。残薬バッグによる再診促進キャンペーンを仕掛けたがあまりパッとしない。性格は完璧主義。

猫屋敷純平(45歳、男性)ねこやしき内科クリニック 院長

5年前に開業。ここ数年でだいぶ経営が安定してきた。初めての患者満足度アンケート調査を実施して、結果にショックを受ける。性格は心配性。

トランクに3人分のゴルフバッグを積んだレクサスLXは、クラブハウスの玄関から静かに発車した。「猫屋敷先生、お疲れのところすまないね」「いえいえ、お二人とも帰り道の途中ですから」「助かるよ」――のどかな田園風景を抜けて、高速のインターに入る頃に、車内では近況報告会の続きが始まっていた。

「お、一本槍先生のホームページを見つけたぞ。どれどれ…」iPhoneを凝視する八木田。バックミラーにはその様子を心配そうに見つめる一本槍の姿が映り、猫屋敷の口元は思わず緩んだ。「どう?」「悪くはないと思うけど…」「ホームページを開設すれば新患が増えると期待したんだが、効果がよくわからなくて。何か改善点があったら教えてよ」画面を何度かスワイプし、八木田は唸った。こんなとき、気の利いた言葉が出てくるタイプではない。

ホームページの効果測定

ホームページの効果測定

ホームページは非常に有用なPR手段のひとつではありますが、自院にとって本当に有効なツールなのかは分析してみないとわかりません。患者さんがどこで自院を知ったのかをアンケートなどで事前に調べて、ウェブ経由が多いのであればホームページは有効でしょう(特に開業して間もないなら、病院検索サイトへの登録や、ポスティングやビラ配りのほうが効果的です)。開設したホームページの効果については、先ほどと同様のアンケートを定期的に行って「見える化」しないと評価できません。また、ホームページからは色々な数値を取ることができますので、最終的なゴールは集客であったとしても、それに関連すると思われる間接指標(閲覧数、問い合わせ数など)をKPI(Key Performance Indicators:重要業績指標)として設定して定量的に追うと、具体的な改善点が見えてきます。

車内の停滞した雰囲気を変えようと、猫屋敷は打ち明け話を始めた。「実は最近、患者満足度の調査を初めてやってみたんです。そしたら、開業当初から懇意にしていた患者さんからいっぱいダメ出しをもらいました。明日その患者さんの予約日なんですが、正直、気まずくて…」iPhoneをポケットにしまった八木田は、満足度調査をしたこと自体が勇気ある行動だと慰め、一本槍は前を向いてこういった。「それさ、怒ってるんじゃなくて、叱られたんだよ。愛されてるよ、猫屋敷先生は。」

「怒り」と「叱り」の違い

「怒り」と「叱り」の違い

「怒り」と「叱り」はその意味が大きく異なります。感情的かそうでないかがポイントで、「怒る」のはHotなイメージ、「叱る」はCoolなイメージになります。もっと具体的にいうと、「怒り」は、声を荒げたり、顔を赤くしたりして、感情的に自分の気持ちをぶつけて、ストレスを発散する行為ともいえます。一方、「叱り」は、教育的指導の要素が強く、相手に変わってほしいという優しさを内包したコミュニケーションです。「こうしたら良くなるのではないか」というポジティブなフィードバックの意味がふくまれています。患者教育には勇気ある“叱り”も必要なのです。

「良いこというなぁ」と一本槍を小突いた八木田は、少し恥ずかしそうに続けた。「猫屋敷先生は優しいから慕われると思うよ。それに比べて僕は、尿酸値がコントロールできていない患者さんをつい責めたり、暴飲暴食する患者さんを怒ってしまうから」

「WHY」はNGワード 接続詞に注意する

「WHY」はNGワード

「薬が飲めない」、「食事を変えられない」と患者さんがいったときに、つい「なぜできなかったの」と聞きがちですが、こう問われるのは患者さんにとっては怖いものです。「なぜできなかったの」ではなくて、「どうすればできましたか」とWhyからHowにいい換えるだけで印象がだいぶ変わります。Whyは詰問する印象が出てしまいますが、Howにするとポジティブなニュアンスになります。

接続詞に注意する

接続詞に注意するのもポイントです。「だけど」、「しかし」、「けれども」などの逆接の接続詞を使うときは注意してください。たとえば「忙しくて薬を飲めませんでした」「だけどね」となると、相手は否定された印象を持ってしまいます。逆接の接続詞の後に来る内容はえてして悪いことが多いので、なるべく「しかし」を使わないように心掛けるだけで、全体的にポジティブなニュアンスになり、患者さんを受け入れる印象になります。

「気持ちはよくわかるなぁ。病識のない患者さんをうまく叱るのは本当に難しいよ」

上手な叱り方 ダメな叱り方

「でも、なかには叱られたい人もいるからね」

叱ってほしい患者さん

「僕らのような、高尿酸血症とか生活習慣病をメインで診ている医師の共通の悩みだよね」

上手な叱り方

患者指導のうえで、上手な叱り方のポイントは2つあります。1つは「WBAルール」です。「Why」、「Because」、「And then」の頭文字を取ったもので、医師が「どうして尿酸値が上がったの?」(Why)と聞くと、患者さんは「最近忙しくて薬を飲み忘れました」(Because)と答えます。そこで医師が「それなら、忘れないように日記帳に書きましょうよ」(And then)というように提案をふくむ解決策を示すようにすれば、内容は叱っていたとしても、叱っているように聞こえません。Whyの部分が先ほどのポイント③と矛盾してしまうのですが、要は「叱るときは解決策とセットにしましょう」ということです。もうひとつのポイントは「いつ叱るか」、つまり時期の問題です。診察室に入ってきて椅子に座った瞬間に「尿酸値が高くなりましたね」などというよりも、最初はむしろ「よく今回来られました。忙しくなかったですか。外は寒かったでしょう」というように褒めてあげて、場を温めてから叱るようにしましょう。

ダメな叱り方

叱ることに関しては「To do」よりも「Not to do」で考えると良いと思います。図に示したようなダメな叱り方を避ければ、それほど叱り方にこだわる必要はないと思います。あれもこれも覚えるのではなく、あれとこれをしちゃいけない、と考える姿勢がマネジメントには大切です。叱り方で、一番良くないのは「恥かかせ叱り」です。外の患者さんにも聞こえるような大きい声で叱ったり、待合室で会計を待っている患者さんに「今度は必ず守ってね」などと人前で念を押したりするのはやめたほうがいいです。叱りは診察室で完結するのが鉄則です。患者さんは、他人に病気のことを知られたり、「あの人は怠惰だ」と思われるのを嫌がります。特にセンシティブな人なら、看護師がいないときに叱るのも優しさかもしれません。

患者さんのモチベーションを下げてしまう5つの叱り方

裵 英洙:医療職が部下に悩んだら読む本.p62-65,日経BP社,2016より改変

叱ってほしい患者さん

パターナリズムが好ましいと思っている患者さんは、叱られたい、指導されたいという願望を潜在的にお持ちの場合があります(年齢の高い層に多い印象です)。しっかりと長い時間をかけて信頼関係を構築したうえで、その人のことを何とかしたい、心配だという気持ちを持っていえば、「ばかだね」というような強い言葉が愛情を持って伝わることもあり得ます。ここまでくれば理想的な医師―患者関係だと思いますが、すべての医師や患者がこの域まで達するのは現実的ではなく、一部で使える高等テクニックだと思います。

後部座席で盛り上がる八木田と一本槍。そこに猫屋敷が恐る恐る声をかけた。「あの…僕にいろいろフォローを入れてくださって大変ありがたいですが…」夕暮れどき、遠くに見える町では明かりが灯り始めている。「目的地設定を間違えてしまったようで、戻るのに時間がかかりそうです……叱らないでください」

「告白」は否定するな

「告白」は否定するな

患者さんが自ら「お酒を我慢することができなかったんです」というように告白してくれるときがあります。こういうときは、絶対にそれを叱ってはいけません。自分の失敗を告白するのは勇気のいることで、叱られるかもしれないけれども、この先生だったら受け入れてもらえるかもしれないという信頼感を持っていっているのです。そういう行動に対して拒絶してしまっては、その人はもう心を開いてくれないし、二度と来てくれないかもしれません。相手が弱みを見せてくれたときは、絶対に否定してはいけません。

ウリアデック ワンポイント インフォメーション 1日2回投与で血清尿酸値6.0mg/dL以下を安定して維持

第Ⅲ相試験(単独療法における長期投与試験) ※用法・用量の範囲内のデータのみ

目的·対象
痛風をふくむ高尿酸血症患者(121例)を対象に、ウリアデックの長期投与における有効性と安全性を検証する。
投与方法
ウリアデックを1日2回(朝夕食後)、58週間経口投与した。ウリアデックは40mg/日から開始し、投与開始2週後に80mg/日、投与開始6週後に120mg/日へ段階的に増量した。投与開始 14週後に血清尿酸値が6.0mg/dLを超えていた場合は投与開始18週後から160mg/日へ増量、投与開始26週後に血清尿酸値が6.0mg/dLを超えていた場合は投与開始30週後から200mg/日へ増量、投与開始38週後に血清尿酸値が6.0mg/dLを超えていた場合は投与開始42週後から240mg/日へ増量し、投与開始58週後まで維持した。
評価項目
有効性[主要評価項目として血清尿酸値低下率、副次評価項目として血清尿酸値など]、安全性
安全性
副作用は121例中82例(67.8%)に認められた。投与終了時における投与量別にみると、120mg/日では84例中56例(66.7%)、160mg/日では18例中13例(72.2%)、200mg/日以上では13例中7例(53.8%)に認められた。主な副作用(発現率が5%以上)は、α1ミクログロブリン増加、尿中β2ミクログロブリン増加、β-NアセチルDグルコサミニダーゼ増加、 ALT(GPT)増加、β2ミクログロブリン増加、AST(GOT)増加、血中トリグリセリド増加、γ-GTP増加、尿中アルブミン陽性であった。本試験において重篤な副作用は、2例(大動脈瘤、冠動脈狭窄、うっ血性心不全)に認められた。副作用により投与中止にいたった症例は、7例(大動脈瘤、冠動脈狭窄、うっ血性心不全、口唇炎、舌炎、口腔咽頭不快感、発疹、悪寒、冷汗、顔面浮腫、異常感、倦怠感、口渇、AST増加、ALT増加)であった。

(株)三和化学研究所
 社内資料:第Ⅲ相長期58週試験【承認時評価資料】

高尿酸血症の治療目標は、高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版において、「血清尿酸値6.0mg/dL以下の維持」となっています。ウリアデックは1日2回投与で血清尿酸値を治療目標値まで低下させた後は、そのまま6.0mg/dL以下を長期にわたって安定して維持・コントロールさせることが示されています。

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