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尿酸産生酵素XO研究の最前線や臨床応用などをエキスパートに伺います。ここから近未来の診療が生まれる。 (XO:キサンチンオキシダーゼ) 益崎 裕章 ( ますざき ひろあき ) 氏 琉球大学医学部 第二内科 教授 第3回 臨床への応用質問7. XO活性と血清尿酸値の関係は? XO(キサンチンオキシダーゼ)活性の亢進は、心血管イベントの「残余リスク」となる可能性があるため、そのことを念頭に診療することが重要です。XO活性の高低を反映する因子として、XOにより産生される尿酸の血中濃度が考えられます。 しかし尿酸は、産生と排泄、尿酸プールのバランスで血中濃度が決定されるため、産生の実態、すなわちXO活性を必ずしも反映していません。そのため、血清尿酸値が高くてもXO活性が低く、逆に血清尿酸値が正常でもXO活性が高い人がいます。私達の研究でも、血中XO活性と血清尿酸値の間に相関は認められていません。 血清尿酸値は、高い人と低い人での差は高々、2〜3倍程度であり、尿酸プールを介して穏やかに揺らいでいます。一方で、私達の基礎検討では、血中XO活性の個人差は10倍以上に大きく異なることもわかっています。わかりやすく例えると、尿酸値は「積分」、XO活性は「微分」というイメージで捉えることができ、XO活性は今まさに起こっているリスクを反映する新しい病態把握マーカーとしての意味があるのではないかと考えています。 血清尿酸値のみでリスクを評価するには限界があります。今後は、XO活性を指標とした治療戦略が必要となってくるでしょう。 質問8. XO活性の高い人はどのような人ですか? 現在、血中のXO活性は、研究室レベルではかなり正確に測定できるようになりましたが、臨床現場では実用化されていません。近い将来臨床応用されることを期待していますが、現段階ではXO活性が高いと疑われる人を問診などによりスクリーニングすることが大切になってきます。 まず疑うべき症例は、肥満症、メタボリックシンドローム、糖尿病に代表されるマルチプルリスクを有する人です。また、フルクトースを多く摂取する人も疑うべきです。現代人にとって、フルクトースの摂取は果物ではなく、ソフトドリンクがソースになっています。毎日のように炭酸飲料を飲む人、さらにそういう人で尿酸値が高い人はかなりハイリスク群ではないかと考えます。飲酒量の多い人、プリン体の摂取量の多い人も要注意です。 質問9. 今後、どのような研究をしたいと考えていますか? これまで、高尿酸血症の研究があまり進まなかった理由の1つに、動物実験を実施しにくいことがあります。実験に用いられるラットやマウスは尿酸酸化酵素を有し、尿酸が速やかに代謝されてしまうからです。つまり、ヒトに類似した高尿酸血症の動物モデルが存在しないのです。 そんな中、最近「第二世代」と呼ばれるトピロキソスタットなどのXO阻害剤が登場してきました。これらの薬剤を活用し、臨床研究から多くのことが明らかにできる可能性が期待されます。特に、心血管イベントに与える影響に注目しています。 日本以外の主要な先進諸国では高尿酸血症≒痛風と捉えられ、痛風を起こしていない限りは病気ではないと考えられてきました。この状況はメタボリックシンドロームとよく似ており、日本が世界に先駆けてメタボリックシンドロームという概念を発信したときには、ただリスクを表している病態であるのに、病気と認定して治療介入をするのか、という海外からの批判がありました。 しかし、発症していない段階から病気は始まっていると考え、今ではメタボリックシンドロームの概念が世界に広がりました。XO活性測定も同様で、近未来のイベントを予測する因子として、日本から世界へ広げていきたいと考えています。 |
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