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尿酸産生酵素XO研究の最前線や臨床応用などをエキスパートに伺います。ここから近未来の診療が生まれる。 (XO:キサンチンオキシダーゼ) 益崎 裕章 ( ますざき ひろあき ) 氏 琉球大学医学部 第二内科 教授 第2回 心血管イベント残余リスクとしてのXO質問4. 先生は、心血管イベントの「残余リスク」として高尿酸血症を提唱されています。「残余リスク」とは何でしょうか? ACE阻害薬やARB、スタチンなどの優れた薬剤は、心血管イベントの発症抑制に大きく貢献していますが、それらの薬剤を用いても依然として心血管イベントを発症する例が少なくないのも事実です。すなわち、それらの薬剤を用いても何らかのリスクは残っており、これを「残余リスク」と呼んでいます。残余リスクの候補は種々ありますが、私たちは、高尿酸血症、とくに尿酸産生酵素XO(キサンチンオキシダーゼ)の活性に伴う過剰な酸化ストレスを提唱しています。 質問5. XOとはどのような酵素でしょうか? 尿酸産生酵素としてキサンチン酸化還元酵素(XOR)が主要臓器や血管など体中の組織に広く分布することが知られていますが1)、哺乳動物においてはこのXORが一部修飾されることによってキサンチンオキシダーゼ(XO)として働くことが知られています。 XOはヒポキサンチン→キサンチン→尿酸の反応により尿酸を産生するとともに、その過程で活性酸素種(H2O2、O2-)を発生させ酸化ストレスを誘導します。ここで生まれた酸化ストレスは、感染防御において重要な役割を果たしています。一方で、虚血などの低酸素状態やメタボリックシンドロームではXOの発現が過剰になることがわかっており、臓器障害やイベント発生に関与すると考えられています。 実際、冠動脈疾患患者におけるXO活性を調べた試験では、健常者と比較して病的冠動脈のXO活性およびヘパリン処理後の全身XO活性が上昇していることが報告されています2)。さらに、腎機能が低下した高血圧患者において、心血管イベントを減少させる因子として「XO阻害薬アロプリノールの投与」の関連性を示した報告もあります3)。 XOは、心血管イベントとの関わりが少しずつ明らかになっています。今後研究が進み、心血管イベントとの関係がさらに解明されていくことが期待されます。 質問6. イベント抑制を目的とした高尿酸血症治療のターゲットは「血清尿酸値」と「XO活性」のいずれでしょうか?? さきほどお示ししたように、イベントを起こした人でXO活性が高かった、もしくはXO阻害薬の投与が心血管イベントのリスク低下因子として同定されたという報告は存在します。しかし、それが、尿酸低下による作用か、XO阻害による作用かについてはわかっていませんでした。 そんな中、興味深い試験結果が報告されました。その試験は、心不全患者を対象に、XO阻害薬と尿酸排泄促進薬が内皮細胞機能に及ぼす影響を検討したものです。 結果は、XO阻害薬投与では内皮機能が改善した一方、尿酸排泄促進薬投与では改善が認められなかったというものでした。そして、XO阻害薬投与の内皮機能改善は、酸化ストレスの改善によるものであることも示されました。 このことは、イベント抑制のためにはXOの阻害による酸化ストレスの軽減が重要であることを示しています4)。 また、XO活性抑制の意義に関して、慢性肉芽種症患者の血管内皮細胞機能が1つの示唆を与えてくれます。慢性肉芽腫症は、生体防御に必要な酸化ストレス発生源の1つであるNADPHオキシダーゼが欠損した病態です。 この患者さんの血管機能を測定すると、血管が大きく広がることが確認されています。つまり、血管においては酸化ストレスが軽減されている状態が、血管機能を良好に保つと考えられます。 XOが過剰に活性化している人では、酸化ストレスも過剰となり、血管機能が低下している可能性があります。これを抑制すべく、特に、血管のXO活性をターゲットにした治療が重要ではないかと考えられます。 参考文献
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