監修

裵 英洙(はい えいしゅ)

ハイズ株式会社代表取締役社長
医師、医学博士、経営学修士(M.D.、Ph.D、MBA

 

金沢大学医学部を卒業後、胸部外科を中心に臨床経験を積んだ後、同大大学院にて外科病理学を専攻。病理医として働くかたわら、慶應ビジネススクールにて医療政策・病院経営を学ぶ。在学中に医療機関再生コンサルティング会社を設立。現在、ハイズ株式会社代表取締役として医療機関の経営支援、ヘルスケア企業の医学アドバイザーなどの業務を行っている。著書に、「医療職が部下を持ったら読む本」「なぜ、一流の人は『疲れ』を翌日に持ち越さないのか」「10の仕事を1の力でミスなく回す トリアージ仕事術」などがある。

第11回 医師‐患者関係の構築って難しい! ~患者との距離を縮める方法~

高尿酸血症をふくむ生活習慣病では、診療に対する患者さんの満足が得られなければ、治療自体が成り立ちにくくなります。患者さんの不満は、治療の中断やアドヒアランスの低下などにつながり、クリニックの評価や経営にも影響を及ぼします。しかし、患者さんは医師に対して自分の感情を表現しづらく、医療者側が想像力を働かせ、不満の原因を取り除いていくことが必要だと考えられます。

このコンテンツでは、患者さんと院長のモノローグを通じて、患者満足度向上のポイントを裵 英洙先生にご解説いただきます。

モノローグを見る

Case 11

今回の登場人物

八木田俊雄(53歳、男性)やぎた内科クリニック 院長

10年前に開業。周囲に競合の医院が増え、患者数が減少傾向となってきた。以前、残薬バッグによる再診促進キャンペーンを仕掛けたがあまりパッとしない。専門は内科で、高尿酸血症・痛風の診療を得意としている。性格は完璧主義。

北村英一郎(52歳、男性)飲食チェーン店運営会社役員

健康診断にて高尿酸血症および腎機能の中等度低下を指摘され、家の近くのクリニックを受診したが対応の悪さに立腹。勤務先の近くにあるやぎた内科クリニックに変更し、特に問題なく通い続けている。真面目な性格で、気難しい印象を持たれやすい。

やぎた内科クリニック院長の八木田は、受付で意外な光景を目の当たりにした。あの気難しい北村さんが…笑っている。嫉妬にも似た焦燥感がじわりと広がり、思わず胸を押さえた。北村さんは高尿酸血症と腎機能低下のため数ヵ月前から通い始めた。診察室ではポーカーフェイスで、こちらを値踏みしているような視線を投げかけてくる。その目が厳しかった父を想起させるからか、何となく…苦手だ。患者さんに対してそんな感情を抱いてはいけないのに。

万人に好かれる医師 「べき論」で考えるな

万人に好かれる医師

「万人に好かれる医師」を見たことがありますか? いたとしてもごく稀なのではないでしょうか。やはり医師も人間ですから、好き嫌いや相性があって当然だと思います。10人いて7人に嫌われる医師は何か問題がありそうですが、10人いて1人に嫌われるくらいは当然だと思います。だからといって残りの1人を無視していいというわけではありませんが、10人いて10人に好かれるのはかなり大変です。「一定数は合わない人もいるのが当たり前」と思っておくのが妥当ではないでしょうか。

「べき論」で考えるな

理想的な医師-患者関係というのは、患者さんの人格や環境、疾患やその重症度などによって大きく異なり、個別化して考えなければならないものですから、あまり「べき論」でとらえないほうがいいと思います。クリニックと患者さんの関係は、いわば恋愛のようなもの。まずは合う/合わないが大事です。また、関係を深めていくときに少し嫌なことがあると、それだけで冷めてしまいかねませんので、最初は相手がいかに快適になるかよりも、いかに不快にならないかということを優先するとよいでしょう。たとえば、忙しそうな患者さんだったら、それを汲み取って、時間がないことを気にかけてあげると良いと思います。

物陰から見ていると、どうも北村さんは受付スタッフと仲が良いようだ。「まさか、自分が経営する店に引き抜こうとしているのか?」妄想が膨らむ。…いや、そんなことを疑っても仕方ない。問題は自分がきちんと医師‐患者関係を築けていないことだ。北村さんの笑顔を、診察室でも見られるように努力する必要がある。そうだ。せっかくスタッフが良いコミュニケーションを取ってくれているのに、院長の自分がうまく接することができないとは情けない。私の一方的な苦手感を払拭して、北村さんとの距離を縮めなければ――。

患者との距離を縮める 距離を縮める3つのコ

患者との距離を縮める

医師と患者さんの距離が近くなるときは、患者さんから距離を縮めてくるパターンと、医師から縮めるパターンの2つがあると思います。患者さんから縮めてきた場合は、医師はその気持ちを間違いなく受け取ってあげなければいけません。一方、患者さんが動かないときは医師のほうから歩み寄る必要があります。全員の患者さんに対して距離を縮める必要はないと思いますが、コンプライアンスの悪い方や、自分が苦手だなと思っている方に対しては意図的に距離を縮めることをお勧めします。苦手を克服するには、それに多く曝露する、要は慣れることが近道です。「苦手だ、苦手だ」といってずっと避けていたら、どんどん苦手になってきてしまいます。苦手な人に対しては、意識して距離を縮めるようにしましょう。

距離を縮める3つのコ

患者さんはもちろん、部下やスタッフなど権威勾配がある人とのコミュニケーションを円滑にする「3つのコ」のルール(コマメ・コワザ・コネタ)があります。まず「コマメ」とは、短時間で頻繁な接触を繰り返し、文字どおり小忠実にコミュニケーションを取ることです。これは有名な「ザイアンスの法則」(人間は1度見ただけよりも2度3度、さらに4度5度見た人間のほうにより好意を感じる)に基づいたルールです。ライトでも頻繁に接触を試みることで、徐々に心理的なハードルを下げることができます。次の「コワザ」は小技、すなわち色々なツールを用いてコミュニケーションを補完することです。シチュエーションや相手、内容によって意図的に伝達ツールを使い分けると良いでしょう。たとえば、いつも口頭で伝えていることを、患者さん用の資材を使って説明したり、メモやホワイトボードに書いたり、ほかのスタッフから伝えてもらったりするなど、手を替え品を替えてアプローチすれば、飽きさせずに興味を持ってもらえると思います。最後の「コネタ」は、ずばり小ネタのことです。日常生活、ニュース、趣味などに関するアイスブレイク的なもので構いません。メモにオリジナルの絵文字やイラストを描くのも一手です。小ネタには、こちらに関心を向けさせ、警戒心を低下させるという効果があります。あくまでスパイス的な位置付けなので使いすぎには注意ですが、うまく使えばコミュニケーションを深める良いきっかけになります。

北村はクリニックの玄関を出て、雨上がりの空を見上げた。これがゲリラ豪雨というやつか。1時間ほど前にここに辿り着いたときにはびしょ濡れで、院内に入ることさえ憚られたが、受付の子が気を遣ってタオルを持ってきてくれた。前のクリニックとは雲泥の差だ。院内の雰囲気は明るいし、清潔感もある。院長も真面目で、私の話をきちんと聞いてくれるし、高尿酸血症が慢性腎臓病の発症や悪化のリスクになることを丁寧に説明してくれたから、しっかり治療する気になったんだ。

第一印象のロスを防ぐ コミュニケーションコスト

第一印象のロスを防ぐ

コミュニケーションを円滑にするためには、第一印象のロスを防ぐことも大事です。患者さんが診察室に入ってきたときに自分の身体の正面を向けて、相手を2秒見る、これだけで大きく印象が異なります。先生の診察室のデスクや椅子の配置はいかがでしょうか? もし、物理的に相手と相対しにくいようであれば、パソコンや椅子の配置を少し調整してみてください。これだけで、患者さんに与える印象は大きく変えられると思います。

コミュニケーションコスト

人間にはどうしても相性というものがありますので、どんなに努力しても合わない人がいると思います。医師と患者という1対1の関係だと、合わない人が1割ぐらい生じるのが普通ですが、そこに1人スタッフが入ることで、クリニックのトータルとして合わない患者さんの割合を減らすことができます。ここで、「コミュニケーションコスト」という考え方を紹介します。コミュニケーションコストとは、意思を疎通させるために必要な、目に見えないコストのことです。たとえば、阿吽の呼吸や以心伝心を実現している老夫婦のコミュニケーションコストはほぼゼロでしょうし、太陽系の外から来た宇宙人とのコミュニケーションコストは天文学的な高さだと思います。これらは極端な例ですが、医師や院長は肩書があり、年齢が少し高いことが多いので、コミュニケーションコストは高くなりがちです。コミュニケーションコストが低い人とは、話しかけやすく、話すことが億劫でなく、本音がいいやすい人であり、一般的に院長より受付スタッフのほうがコストが低いと思います。患者さんがコミュニケーションコストの低い人を選んで話をしても、その情報が共有されて最終的な意思決定に結び付けば、仮に医師とのコミュニケーションがあまり円滑でなかったとしても経営的には問題はないと思います。コミュニケーションの面でも、チーム医療が活躍する余地は大きいといえます。

雨で浄化された空気を胸いっぱいに吸いながら、会社への道を歩く。うちの若い連中も、やぎた内科クリニックのスタッフをぜひ見習ってほしい。そうだ、部下のあいつも痛風を患っていたが、喉元過ぎれば熱さを忘れ、暴飲暴食の日々を送っているようだ。このクリニックを紹介して、ちゃんと治療を続けるよう八木田先生にいってもらおう。ふと、どこからか“Over the Rainbow”のメロディが聴こえてきた。

ウリアデック ワンポイント インフォメーション 中等度腎機能障害合併例対象の二重盲検試験において、治療目標値達成率90%

第Ⅲ相試験(中等度腎機能障害合併患者を対象とした二重盲検試験)

目 的
中等度腎機能障害を合併した痛風をふくむ高尿酸血症患者を対象に、ウリアデックの有効性及び安全性をプラセボを対照として検討する。
対 象
中等度腎機能障害(CKDステージ3)を合併した痛風をふくむ高尿酸血症患者(血清尿酸値:痛風関節炎の既往又は痛風結節のある患者7.0mg/dL以上、上記以外の患者8.0mg/dL以上)(腎機能:30≦推算糸球体濾過量(eGFR)<60mL/min/1.73m²)123例[プラセボ群61例、ウリアデック群62例]
試験方法
多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験
投与方法
ウリアデック群及びプラセボ群に無作為化し、ウリアデック又はプラセボを1日2回(朝夕食後)、22週間経口投与した。ウリアデックは40mg/日から開始し、投与開始2週後に80mg/日、6週後に120mg/日、14週後に160mg/日へ段階的に増量した。
注)投与2週後、6週後、14週後、22週後に痛風関節炎が発現していた場合、最大1週間までそれぞれの用量で投与を継続した。
評価項目
有効性[主要評価項目として血清尿酸値低下率及びeGFR変化量、副次評価項目として血清尿酸値6.0mg/dL以下の達成率、尿アルブミン/クレアチニン比、家庭血圧など]、安全性
安全性
副作用は、ウリアデック群62例中25例(40.3%)、プラセボ群60例中14例(23.3%)に認められた。主な副作用(発現率が5%以上)は、ウリアデック群で痛風関節炎、ALT増加、AST増加、プラセボ群は痛風関節炎、尿中アルブミン陽性であった。
本試験において重篤な副作用は、1例(多発性関節炎)に認められた。副作用により投与中止にいたった症例は、3例(AST増加、ALT増加、湿疹、多発性関節炎)であった。
使用上の注意(一部抜粋)
1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
(1)重度の腎機能障害のある患者[使用経験がなく安全性が確立していない。]

(株)三和化学研究所 社内資料:第Ⅲ相CKD試験【承認時評価資料】
Hosoya T, et al. : Clin Exp Nephrol 18 (6) : 876, 2014

ウリアデックは中等度腎機能障害合併例に対する有効性と安全性を二重盲検下で確認しています。本試験では血清尿酸値6.0mg/dL以下の達成率は90%に達するとともに、経時的な尿アルブミン/クレアチニン比の低下が認められました。

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