監修

裵 英洙(はい えいしゅ)

ハイズ株式会社代表取締役社長
医師、医学博士、経営学修士(M.D.、Ph.D、MBA

 

金沢大学医学部を卒業後、胸部外科を中心に臨床経験を積んだ後、同大大学院にて外科病理学を専攻。病理医として働くかたわら、慶應ビジネススクールにて医療政策・病院経営を学ぶ。在学中に医療機関再生コンサルティング会社を設立。現在、ハイズ株式会社代表取締役として医療機関の経営支援、ヘルスケア企業の医学アドバイザーなどの業務を行っている。著書に、「医療職が部下を持ったら読む本」「なぜ、一流の人は『疲れ』を翌日に持ち越さないのか」「10の仕事を1の力でミスなく回す トリアージ仕事術」などがある。

第7回 褒め上手な医師になりたい! ~モチベーション向上のコツは「結果より経過」~

高尿酸血症をふくむ生活習慣病では、診療に対する患者さんの満足が得られなければ、治療自体が成り立ちにくくなります。患者さんの不満は、治療の中断やアドヒアランスの低下などにつながり、クリニックの評価や経営にも影響を及ぼします。しかし、患者さんは医師に対して自分の感情を表現しづらく、医療者側が想像力を働かせ、不満の原因を取り除いていくことが必要だと考えられます。

このコンテンツでは、3人のクリニック院長の会話を通じて、患者満足度向上のポイントを裵 英洙先生にご解説いただきます。

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Case 07

今回の登場人物

一本槍誠治(55歳、男性)いっぽんやり内科クリニック 院長

5年前に開業。ベッドタウンにある駅から徒歩3分の好立地にある。患者数が伸び悩んでいるため、最近ホームページを開設した。性格は楽観的。

八木田俊雄(53歳、男性)やぎた内科クリニック 院長

10年前に開業。周囲に競合の医院が増え、患者数が減少傾向となってきた。残薬バッグによる再診促進キャンペーンを仕掛けたがあまりパッとしない。性格は完璧主義。

猫屋敷純平(45歳、男性)ねこやしき内科クリニック 院長

5年前に開業。ここ数年でだいぶ経営が安定してきた。初めての患者満足度アンケート調査を実施して、結果にショックを受ける。性格は心配性。

クラブハウス3階のラウンジには昼下がりの光が差し込み、早朝からのラウンドを終えた3人の身体を柔らかく迎え入れた。「今日のコースは難しかったな」「ほら、猫屋敷先生がボールを4つ献上した池がよく見えるぞ」「やめてくださいよ、一本槍先生…」ゴルフコースを一望できる席に飲み物が届くと、さっそく近況報告会が始まった。

一国一城の主といえば聞こえはいいが、クリニックの院長は孤独な職業だ。3人はかつて大学時代のサークル仲間であり、今では高尿酸血症・痛風をはじめとした生活習慣病をメインで診る開業医同士。話したいことは山ほどある。「一本槍先生の新しいホームページ見ましたよ」「患者数増えました?」「よくわからん」「うちも残薬バッグを使った再診率向上作戦を展開したんだが」「そりゃ斬新ですね」「思うようにはうまくいかなかったよ……」

八木田は買ったばかりの飛距離測定器をいじりながら、小さくつぶやいた。「本当は、ほかにも解決策があるんだろうな……患者さんのモチベーションを上げることができれば、いろいろ策を講じなくても受診はしてくれるだろ?」それはほかの2人も痛感していることだった。「治療に前向きにさせるためには褒めればいいとは思うけど」「実際はつい叱ってしまうよ」「自分がもっと褒め上手なら良かったのに……」

結果より経過

結果より経過

患者さんのモチベーションを上げるには、褒めるのも大事ですが叱るのも大事です。目指すは「褒め上手&叱り上手」。それぞれにテクニックがありますが、今回は褒めるテクニックをご紹介します。
褒めるときには「結果を褒めるよりも経過(プロセス)を褒める」ことが大前提になります。高尿酸血症をふくむ生活習慣病において生活習慣の改善は重要な役割を果たしますが、一生懸命に生活習慣を改善しても結果が出ない患者さんはいます。結果だけを見ると褒めるところはなく、叱りたくなってしまうかもしれません。でも、経過に着目すれば「生活を改善しようと努めた」「きちんと通院した」など、褒めるに値する点を見つけることができます。特に無症候性の高尿酸血症や痛風が治まった後など、自覚症状がないのに生活習慣を改善しようとすることや、定期的に通院することなどがどれだけ大変なことか!この点をしっかりと共感すべきだと思います。

なんだか場が暗くなった。こういうときは一本槍の出番だ。「じゃあ、試しに今日のラウンドを褒め合ってみようじゃないか!はい、八木田先生から!」「え?あ、えぇと…猫屋敷先生はゴルフを始めてまだ数年にしては上々のスコアだよ」

行動変容ステージ

「ありがとうございます。う~ん、一本槍先生はバンカーショットがお上手で…」

コミュニケーションの4分類

行動変容ステージ

ご存じのとおり、人が運動などの生活習慣を変える過程は5つのステージ(無関心期→関心期→準備期→実行期→維持期)に分類できます。その行動変容ステージの各フェーズに応じて褒め方を変えるのもテクニックのひとつです。無関心期では、「痛風発作を起こさないためにできることがありますよ」と治療のメリットを教えて意識の高揚を図ったり、このままではまずいと思わせたり、周りへの影響を考えさせるというアプローチが有効です。関心期では、治療に取り組んでいる患者さん自身をポジティブにとらえられるように「痛風の予防にこれほど理解を示してくれる患者さんは珍しい」などと褒めるといいでしょう。また準備期では、治療をうまく行えるという自信を持ってもらい、周りの人に「痛風だからビールは控えている」というように宣言できるような働きかけが考えられます。実行期と維持期では、不健康な行動を健康な行動に置き換えるアドバイスをする、治療を続けていることを褒めるなど、周りからのサポートを得られるようにするといいと思います。

松本千明:行動変容ステージモデル.厚生労働省e-ヘルスネット

コミュニケーションの4分類

コーチングでは、コミュニケーションのタイプを4つに分類しています。患者さんがどのタイプに属しているかで、どのように褒めると喜ぶのか見当をつけることができます。①プロモーター:自己主張、感情表現とも強いタイプです。注目されることを好み、褒められることを喜びますので、ただ褒めるだけでよく響きます。②アナライザー:自己主張、感情表現ともにあまりなく、冷静でとっつきにくい印象があります。分析型ですので具体的に褒められることを喜び、表面ではわかりにくいですが内心は喜んでいます。③コントローラー:自己主張は強いが、感情表現が少ないタイプで、近づきがたい印象です。指示命令をきっちり行い、成果を厳しく追求したいタイプなので、根拠に基づいて成果を褒められると喜びを感じます。④サポーター:自己主張が少ないが、感情表現はあるタイプで、良い人そうに見え、繊細で傷つきやすい性格です。経過を褒めてあげると喜びます。

佐藤 敦:コミュニケーションにまつわる真理-ビジネスの鉄則 ナンバー経営心理学(7)より作成

「バンカーに入らないのが一番いいけどな。あ、八木田先生のドライバーかっこいいよね」「…あまり嬉しくない」「そう?じゃあ、前回のスコアは最高だったね」「…今日のラウンドを褒めるんじゃなかった?」

コンテンツよりコンテキスト

「そうだ!八木田先生は朝イチで来て練習してたじゃないですか。ああいう努力ができる人は少ないです!」

疑似対照を設定する

「…そう?」拗ね気味だった八木田が少し笑った。

コンテンツよりコンテキスト

何かを褒めるとしても、「すてきな指輪をしていますね」などといった褒め方はナンセンスです。医療・治療に関したことで、本人がコミットしたことに関して褒めましょう。この褒める内容(コンテンツ)以上に重要なのが文脈(コンテキスト)です。先生は診察時間の中で「いつ褒めるか」と考えたことはありますか?あの患者さんは最初に褒めたほうがいい、この患者さんはだんだん盛り上げていって褒めたほうがいいなど、患者さんの性格を踏まえてコミュニケーションを設計するといいでしょう。迷ったら、最初に褒めるパターンでいいと思います。患者さんによっては「尿酸値が上がったかもしれない。叱られるかもしれない」とビクビクしています。でも勇気を出して再診しているので、最初によく来たということを認めてあげる、結果とは関係なく「来た」という経過をまず褒めてあげましょう。

疑似対照を設定する

褒め方のテクニックのひとつに、わざと疑似対照をつくるという手があります。たとえば、「昔、僕が診ていた患者さんですが、その人は薬を毎日飲むこともままならなかった。それに比べてあなたはきちんと飲めている」というと、「私が当たり前にやっていることは、実はすごいことなのだ」と認識し、嬉しくなります。というのも、診療室は非常にプライベートな空間で、かつ主観的な場所です。ほかの人がどういう治療を受けていて、どうしたら褒められるのかがわかりません。ですから、医師が軸を見せてあげるのです。軸がなければ、意図的につくってあげればいい。疑似対照は何でもいいのです。「普通だったら半年かかる数値の改善が3ヵ月で改善したのは、平均からすると早い」というのもアリです。なお、同じクリニックに通っている他人と比較すると、友達や知り合いの可能性がゼロではありません。「昔勤務していた別の病院の話なのですが」と前置きしてあげるのも、優しさでしょうね。

ーーしばらく沈黙。冷めたコーヒーを片手に、3人はじっとお互いを見つめ合っていた。堪え切れず一本槍が笑う。「ははは、褒めようと頑張ると、かえって見つけられないものだね」「ほら、猫屋敷先生、無理に褒めようとして眉間にシワが寄ってるよ」

褒めるときはおでこを使え

天井の高いラウンジに、大きな笑い声が反響した。(続く)

褒めるときはおでこを使え

褒める気持ちを表現するには、言葉で「良いですね」というだけではなく、うなずいたり、おうむ返しをしたりすることも非常に有効です。褒めるときは、おでこ(前額部)を意識してみましょう。うなずくときは、おでこを振ります。褒めるときは、「それで?」「すごいね」という形で、相手におでこを寄せます。非常にシンプルですが、実に効果的です。「そうか、よく頑張ったね」と口では褒めているけれども、眉間にしわを寄せてしまうと、患者さんは警戒してしまいます。うなずくときに、顎を意識する方もいらっしゃると思いますが、私は顎よりもおでこを意識したほうが自然だと思います。

ウリアデック ワンポイント インフォメーション 生活習慣等※に影響されない優れた尿酸低下作用

背景因子(飲酒習慣、BMI)別の尿酸低下作用(サブグループ解析)

目的
承認時までに実施した痛風をふくむ高尿酸血症患者を対象とした5つの国内無作為化二重盲検並行群間比較試験(第Ⅱ相試験3試験及び第Ⅲ相試験2試験)の結果より、各層別因子(飲酒習慣、BMI)が血清尿酸値低下作用に与える影響を検討する。
投与方法
ウリアデックを1日2回(朝夕食後)、8、12、16又は22週間経口投与した。ウリアデックは40mg/日から開始してその後増量し、投与終了時の用量は80mg/日、120mg/日、160mg/日とした。
解析計画
患者背景因子(飲酒習慣、BMI)別の尿酸低下作用について、サブグループ解析を行う。
安全性
5つの国内無作為化二重盲検並行群間比較試験において、ウリアデック投与群における副作用は465例中146例(31.4%)に認められた。主な副作用(発現率が5%以上)は痛風関節炎、ALT(GPT)増加、 β-NアセチルDグルコサミニダーゼ増加であった。

(株)三和化学研究所
 社内資料:国内臨床試験における層別解析【承認時評価資料】

高尿酸血症はほかの生活習慣病との合併が多いことが報告されており、患者背景にはさまざまな因子が存在し得ます。ウリアデックは患者さんの飲酒習慣やBMIに影響されず、優れた尿酸低下作用を発揮します。

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