第12回 インスリン療法(BOT)にセイブルを追加する場合 那珂記念クリニック 院長 遅野井 健 先生

症例の紹介

70歳女性、BMIが26.8kg/m2と過体重の患者さんです。持効型溶解インスリンと経口血糖降下薬の併用中(BOT)ですが、HbA1c8.3%、空腹時、食後血糖はいずれも高値となっています。今回はBOTにて血糖コントロールが不十分な患者さんの薬物選択の方針について考えてみましょう。

  • 70歳、女性、主婦
  • 身長:151 cm、体重:61 kg、BMI:26.8 kg/m2
  • 家族構成:娘夫婦と3人暮らし
  • 現病歴:10年前に2型糖尿病と診断され、他院にてインスリングラルギン18IU、グリメピリド1mg、ピオグリタゾン30mgにて治療中。
  • HbA1c:8.3 %
  • 空腹時血糖値:145mg/dL
  • 食後2時間血糖値:242mg/dL
  • 糖尿病合併症:微量アルブミン尿陽性

TIPS1

体重に影響のある薬剤は減らすか中止する

この患者さんはBMIが25を超えていますので、まず体重に影響のあるSU薬やインスリンの減量、可能であれば中止を検討します。そのうえで、この患者さんは微量アルブミン尿を呈していますので、血糖コントロール改善が期待でき、かつ体重に影響しにくい経口血糖降下薬の追加を検討します。

TIPS2

高齢患者では低血糖に特に注意が必要

低血糖は転倒や認知症などのリスクであることからも、高齢者では特に低血糖を回避することが重要です。また、高齢者では無自覚低血糖や非典型的な低血糖症状を呈することが多いことにも注意が必要です。さらに、高齢の糖尿病患者さんは、認知機能を障害し、心血管イベントのリスクともなりうる重症低血糖を来しやすいという問題もあります。特に長時間作用型のSU薬は夜間の低血糖が多いため、できるだけ低用量で使用する、血糖変動を滑らかにするα-GIなどと併用で使用するなど、特に高齢者では慎重な投与が求められます。また、重症低血糖が危惧される場合は、目標下限値を設定することも重要です。このたび発表された「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」では、この患者さんのように65歳以上75歳未満で、インスリン製剤やSU薬、グリニド薬など重症低血糖が危惧される薬剤を使用している場合は、HbA1c7.5%未満を目標とし、下限を6.5%に設定しています。高齢者は心身機能の個人差が著しいため、このような目標値を参考に、患者さんごとに個別化した治療を行うのがよいでしょう。

12<<