第11回 セイブルにインスリンを追加する(BOT)場合 那珂記念クリニック 院長 遅野井 健 先生

症例の紹介

65歳男性の患者さんです。罹病期間が長く、α-GIを含め経口血糖降下薬3剤併用中で、HbA1cは8.7%、また空腹時、食後血糖とも高値を認めています。今回は経口血糖降下薬3剤併用にて血糖コントロールが不十分な患者さんの薬物選択の方針について考えてみましょう。

  • 65歳、男性、無職(定年後)
  • 身長:165 cm、体重:64 kg、BMI:23.5 kg/m2
  • 家族構成:妻、娘2人と4人暮らし
  • 現病歴:15年前に2型糖尿病と診断され、他院にて10年前からグリメピリド1mg/日にて治療開始、3mg/日まで増量した。血糖コントロールが不十分で食後高血糖も顕著だったため、3年前にグリメピリド1mg/日に減量、シタグリプチン50mgを追加した。その後、食後高血糖が改善しなかったためα-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)1日3錠を追加。
  • HbA1c:8.7 %
  • 空腹時血糖値:152mg/dL
  • 食後2時間血糖値:270mg/dL
  • 糖尿病合併症:神経障害あり

TIPS1

ある程度の努力をしても血糖コントロールの改善が
認められなければインスリン導入を検討する

多剤併用中で、痩せ型、すなわちある程度の生活改善を行っていてもHbA1cが8.0%を超えていれば、インスリン導入を検討します。インスリンの導入にあたっては、特に夜間の低血糖を回避するため、作用時間の長いSU薬は中止すべきと考えます。

TIPS2

インスリン導入には必ず患者さんの同意を得る

インスリン導入に関しては患者さんの同意が必要不可欠です。インスリンへの拒否感は、注射に対する拒否感と、インスリン療法に対する拒否感の2つがあります。注射は痛いとか怖いという感情と、インスリン治療を始めたらもとには戻れない、低血糖が怖いといった感情です。そのため、インスリン導入に同意が得られない場合でも、持効型溶解インスリンと同じ1日1回注射のGLP-1受容体作動薬には抵抗を感じない患者さんが少なくないので、まずGLP-1受容体作動薬を処方します。それで血糖コントロールが改善しない場合は、改めてインスリン導入の話をすると受け入れてもらえることがあります。その際には、日中の血糖変動を説明し、低血糖リスクの高い時間帯の注意点など低血糖回避のためのポイントを十分指導することが大切です。

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