第9回 併用療法を念頭に治療する必要のある2型糖尿病患者の初回治療 那珂記念クリニック 院長 遅野井 健 先生

症例の紹介

50歳男性の患者さんです。治療中断歴があり、HbA1c9.6%、空腹時血糖135mg/dLといずれも高値で、網膜症の合併もみられます。今回はHbA1cが高めの患者さんの薬物選択の方針について考えてみましょう。

  • 50歳、男性、工場勤務
  • 身長:168 cm、体重:70 kg、BMI:24.8 kg/m2
  • 家族構成:1人暮らし
  • 現病歴:5年前に他院にて 2型糖尿病と診断され、内服加療していたが、血糖値が改善したために自己判断で服薬中断。以来、通院もしていなかった。しかし、友人が糖尿病の合併症で透析になったことを知り、不安になって来院。
  • 服薬歴:DPP-4阻害薬(自己中断)
  • 糖尿病罹病歴:推定5年
  • HbA1c:9.6 %
  • 空腹時血糖値:135mg/dL
  • 食後2時間血糖値:230mg/dL
  • 糖尿病合併症:単純網膜症

TIPS1

1年後をめどに血糖コントロール達成を目指す

この患者さんのようにHbA1cが高い方は、薬物治療を行っても単剤では血糖が十分低下しない可能性があるため、併用を念頭に置いて治療方針を決定します。できるだけ早期の血糖コントロール改善が求められますが、大血管障害を含めた合併症リスクは徐々に進行して、高血糖が10年以上持続すると合併症リスクが高くなることが報告されています。
したがって、数ヵ月という短期間での血糖コントロール達成を目指すのではなく、およそ1年をかけて患者さんにしっかりと治療方針を理解いただきながら良好なコントロールを達成することを目標とし、長期にわたる血糖コントロールの礎を築くことが重要と感じています。治療方針としては、まず食事・運動療法を行い、次に単剤による薬物療法、さらに併用療法と段階的に進めます。特に、この患者さんのように糖尿病網膜症のある方では、急激な血糖コントロールにより網膜症が悪化するおそれがあるため、注意が必要です。

TIPS2

HbA1c値にかかわらずα-GIから治療を開始する

この患者さんはDPP-4阻害薬の服薬歴がありますが、DPP-4阻害薬は血糖依存性にインスリンが是正されるので、間食や夜食などをしていても血糖値が低下する、つまり、2型糖尿病に好ましくない食習慣が是正されないまま血糖コントロールが改善されてしまう可能性があります。
2型糖尿病治療の基本は食事・運動療法であり、それを患者さんに理解いただくことが重要です。そのため、薬物療法にあたっては患者さんの生活改善の努力が血糖値の改善に結びつく薬剤を第一選択にすべきです。α-GIはそのための有用な選択肢です。

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