第6回 SU薬で血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者 あずま糖尿病内科クリニック 院長 東 大介 先生

症例の紹介

76歳男性、やせ型の患者さんです。空腹時血糖HbA1cはそれほど高くありませんが、随時血糖が300mg/dL超、1,5-AGが1ケタ台と、食後血糖がかなり高いと考えられる症例です。今回はSU薬内服中で食後高血糖を呈する患者さんへの薬物選択の方針について考えてみましょう。

  • 76歳、男性
  • 身長:163.7 cm、体重:49.7 kg、BMI:18.5 kg/m2
  • 家族構成:1人暮らし
  • 現病歴:約35年前に糖尿病と診断され、経口血糖降下薬にて治療を開始した。
    20年前に血糖不良となり一時的にインスリン治療を行ったが、10年前からはグリメピリド2mgでHbA1c6.2%と改善した。
    しかし再び血糖コントロールが悪化したため、当院に紹介となった。
  • HbA1c:7.5 %
  • 空腹時血糖値:74mg/dL
  • 随時血糖値:327 mg/dL
  • 1,5-AG:8.7μg/mL
  • GA:20.1%
  • 血清CPR:1.15ng/mL
  • 蓄尿CPR:36.1μg/day
  • 糖尿病合併症:腎症1期

TIPS1

患者さんの1日の血糖プロファイルを想像して
治療戦略を考える

2型糖尿病は、肥満によるインスリン抵抗性の増大、あるいはインスリン分泌不全(食後のインスリン分泌遅延)、もしくはその両方により、血糖が上昇する疾患であり、その治療においては正常な血糖動態に近づけることが重要です。そのためには、患者さんの1日の血糖プロファイルを想像することがポイントです。体型や罹病期間、検査データ、可能であればSMBGやCGMを実施した結果などを総合して患者さんの血糖プロファイルをイメージし、どうすればそれを正常な状態に近づけられるかを考えます。
また、1,5-AGは食後高血糖を反映する有用な指標で、血糖プロファイルを推測するのに利用できます。しかしながら、尿糖排泄を促進するSGLT-2阻害薬服用中は参考にすることはできません。

TIPS2

食事・運動療法の指導はシンプルに伝え
基本をしっかり理解してもらう

治療を無理なく継続していただくために、糖尿病の病態と治療の基本をしっかり理解していただくことを重視し、患者さんにはシンプルな説明を心がけています。血糖を上昇させないためには食事が最も重要であることを繰り返しお話しし、野菜から食べはじめること、間食をしないこと、食べ過ぎた時は食後に身体を動かすことをポイントにおいて指導しています。

TIPS3

β細胞機能を維持するため食後高血糖改善薬α-GIと
グリニド薬を中心に処方する

糖尿病治療においてはβ細胞機能を維持することが重要です。β細胞が最も仕事をする、すなわちβ細胞に最も負荷がかかるのは食事の時です。したがって、β細胞の負担を軽減するためには食後の血糖上昇をできるだけ抑えることが重要だと考えています。
そのためには、食後高血糖を抑制するα-GIやグリニド薬は有用な選択肢です。
なかでも、食事のたびに小腸における糖質の消化吸収を遅延して食後血糖の上昇を抑制するα-GIは2型糖尿病薬物治療の基本と考えています。
本症例のように食後高血糖がみられる場合は、β細胞保護のためにも、長時間にわたりβ細胞を刺激してインスリン分泌を促進するSU薬は中止することを検討します。

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