第11回 見逃せない糖尿病患者さんのNAFLD合併

最近、非アルコール性の脂肪性肝疾患(NAFLD)が注目されています。メタボリックシンドロームの肝病態ともいわれるNAFLDの有病率は、国内の成人健診受診者の約30%を占めています*1。また、人間ドックに関する報告においても高コレステロール、肥満とともに肝機能異常が約30%を占めており*2、肝機能異常を抱える方は多くいらっしゃることがわかります。そこで、本日は【糖尿病患者さんのNAFLD合併】をテーマにNAFLDについて紐解いていきます。
ご存じのとおり、肝臓は、膵臓から分泌されるインスリンと食事由来のブドウ糖が流入する最初の臓器です。そのため、肝疾患と糖尿病は密接に関係していると考えられております。
糖尿病患者さんの多くが、NAFLDを合併しており、新規糖尿病と診断された日本人患者さんのNAFLD有病率は、62%というデータも報告されております*3。逆にNAFLDの日本人患者さんはNAFLDではない人と比較して糖尿病の発症リスクが高く、男性で4.8倍、女性で14.5倍になることもわかっています*4
NAFLDになるとどうなるのでしょうか? NAFLDのうち非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に進行するのは約1〜2割で、NASHの5〜20%が5〜10年で肝硬変に進行します*5。また、肝臓関連の疾患だけではなく多臓器に渡る影響も多く報告されております。2005年、Diabetes に2型糖尿病患者においてNAFLDを合併している場合に心血管イベントが1.84倍高いことが発表されました*6。同様に2型糖尿病患者においてNAFLDを合併している場合、CKD発症リスクが1.87倍高く、網膜症も1.75倍高いことが報告されております*7
NAFLDになるとALT値が上昇しますが、ALTの基準はどのように考えたらよいのでしょうか?
ALTの上昇と疾患、死亡に関するデータは多く蓄積されてきております*8,9。例えば、2009年、アメリカのNHANESのデータによりALT異常を男性30IU/l超、女性19IU/l超と定義した場合、肝臓関連死のリスクが8.2倍であったことが報告されております*8
これらの蓄積されたデータをもとに、2017年1月にアメリカ消化器学会では、ALTの正常値を男性29〜33 IU/l、女性19〜25IU/lとしました*10。本学会によると、ALTの正常値が低く設定されたことに対しては、医療費増加や不必要な評価、患者の心理的不安の増幅の原因となる等の議論もあるものの、ALT異常による肝臓関連死亡リスクの上昇を考えると、長期的なアウトカムの改善の点から、患者のALTの正常値を目指す重要性を指摘しています。
スイニー®は、全身に分布するDPP-4、コリンエステラーゼ、カルボキシエステラーゼが代謝に関与し、肝代謝はほとんど受けません。また、2型糖尿病患者さんにおけるスイニー®の使用状況や、安全性・有効性を明らかにすることを目的とした3年間の特定使用成績調査「SWIM-JPN」の中間解析(3ヵ月)の結果、肝機能異常の有無で、安全性(副作用発現)や有効性に差が認められませんでした。
また、スイニー®投与によりLDL-コレステロールが有意に低下していたことが報告されています【参考情報】。肝機能異常、NAFLDを考慮した糖尿病治療において、1日2回の投与により、24時間にわたって優れた血糖低下作用が期待できるスイニー®をお役立ていただければ幸いです。
株式会社三和化学研究所では、先生の日常診療にお役立ていただける情報をお届けしてまいります。 今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
スイニー®添付文書
References
*1 Eguchi Y, et al. J Gastroenterol.2012;47:586-95.
*2 2015年「人間ドックの現況」.公益社団法人日本人間ドック学会.
http://www.ningen-dock.jp/wp/wp-content/uploads/2013/09/2ebf31e708cb165bd2c0b68fae972994.pdf
*3 Jimba S,et al. Diabet Med. 2005;22:1141-1145.
*4 Tokita Y, et al. Intern Med. 2017;56:763-771.
*5 日本消化器病学会編:NAFLDNASH診療ガイドライン2014.南江堂,2014.
*6 Targher G, et al. Diabetes. 2005;54(12):3541-3546.
*7 Targher G, et al. Diabetologia 2008;51:444-450.
*8 Gastroenterology. 2009;136(2):477-485.
*9 Int Arch Occup Environ Health 1998; 71:405-412.
*10 Kwo PY, et al. Am J Gastroenterol 2017;112:18-35.