第10回 再注目されるグルカゴンの最新知見
先生方には弊社のDPP-4阻害薬スイニー(R)をご活用いただき、ありがとうございます。
近年、DPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬といった、グルカゴンへの作用を有するインクレチン関連薬の臨床応用、グルカゴンが糖尿病の病態形成に中心的な役割を担うという「グルカゴン中心説」の提示、さらにグルカゴン測定系の飛躍的進歩による研究の発展から、グルカゴンが再び注目されています。本日は、そうしたグルカゴンの最新知見について紹介させていただきます。

定説をくつがえす「グルカゴン中心説」

これまで、インスリンとグルカゴンがバランスを取って血糖調節が行われていると考えられていましたが、2010年、2011年にこの考えをくつがえす論文が報告されました。α細胞欠損マウス、グルカゴン受容体欠損マウスなどグルカゴンの作用が阻害されている状態では、ストレプトゾトシンで膵β細胞を破壊して完全にインスリン分泌を阻害しても、血糖値は全く上昇しないことが示されたのです1)2)
さらに、β細胞を破壊したグルカゴン受容体欠損マウスの肝臓に、アデノウイルスにより一過性にグルカゴン受容体を導入すると血糖値は再上昇することもわかりました3)。これらの知見から、血糖値上昇には、インスリンの有無よりも一定量のグルカゴンの存在が大きく寄与する可能性が示され、2012年にUnger、Cherringtonらによる「グルカゴン中心説」が発表されました4)

グルカゴン測定法の精度向上と病態解明への期待

グルカゴンはインスリンとほぼ同時期である1923年に発見されたにも関わらず、その研究が盛んに行われなった原因のひとつは、グルカゴン濃度の測定における検出特異性が低く、取得データへの信頼性や安定性が疑問視されていたことといわれています5)
インスリンと違い、グルカゴンは類縁ペプチドが多く存在しており、従来の「競合RIA法」では、グリセンチンなど同一のC末端配列を持つ類縁ペプチドも認識してしまう問題がありました。この問題を解決すべく、新しく登場した「サンドイッチELISA法」は、N末端とC末端の両方を認識するため、より特異的なグルカゴン濃度の測定を可能にしました。
さらに、非常に高い検出特異性を持つ質量分析装置(LC-MS/MS)も登場しています。LC-MS/MSとサンドイッチELISA法の両測定方法において、糖負荷試験では、グルカゴン分泌が促進される一方で、食事負荷試験ではグルカゴン分泌が抑制されることが示されました。こうした精度の高い測定法の登場により、さらなるグルカゴンの病態生理の解明が期待されます。

食生活とグルカゴン:夕食後のグルカゴン抑制の重要性

近年、朝食を食べない、1日の食事量で夕食が最も多くなってしまう、夕食時間が遅くなってしまうなど日本人の食生活も大きく変化しております。
実際に2型糖尿病患者で、朝食を摂取する群と朝食を抜く群に分けたクロスオーバー試験では、朝食を抜くことで夕食後の血糖上昇やグルカゴンの上昇に繋がることが示されております6)
スイニー®は、朝夕1日2回の服用で、朝食後、夕食後の血糖低下とともにグルカゴン濃度の有意な低下を示しています(ともにp<0.05,対応のあるt検定 vs投与開始前)7)。グルカゴン分泌抑制を考慮した糖尿病治療で、選択肢のひとつと考えられます。
今後とも先生方の糖尿病治療に役立つ最新情報を提供してまいりますのでよろしくお願いいたします。
スイニー®添付文書
References
1) Hancock AS et al., Mol Endocrinol. 24 : 1605, 2010
2) Lee Y et al., Diabetes. 60 : 391, 2011
3) Lee Y et al., Proc Natl Acad Sci. 109 : 14972, 2012
4) Unger RH,Cherrington AD.,J Clin Invest.122:4-12,2012
5) Bak MJ et al., Eur J Endocrinol. 170 : 529, 2014
6) Jakubowicz D et al., Diabetes Care 38: 1820, 2015
7) スイニー承認時評価資料〔内野 泰 他:薬理と治療40(10)859, 2012〕